京都ちゃん Vol.5

京都ちゃん:誰も逆らえない鬼姑から、新たに課された地獄のルール

鬼姑・ふたたび


結局、ふたりは夕食の時間に下鴨の京野家を訪れ、義母と拓真と凛子の3人で食卓を囲む。

見るからに上質そうな器の数々。色合いも鮮やかに盛られた手料理は、どれも手が込んでいる。

義母の料理は、どれも素直においしかった。

特に、うるい、京たけのこ、菜の花、ホタルイカなどが和えられた前菜に感動した凛子は、「すごく美味しいです」と伝えようと口を開く。

しかしそれも結局、義母に遮られてしまった。

「凛子さん、先週は残念やったねぇ…せっかくの月鍋やったのに。お友達と約束してたんやって?どこに行ってたん?」

先週、凛子が拓真の誘いを断ったため、結局『比良山荘』には家族で出かけたらしい。

「えーっと…そうなんです。幼馴染の友人が、福島の和食を予約してくれてて」

嘘には慣れていない。咄嗟の問いに、店まで変えることなどできなかった。それに、嘘には一部真実を混ぜておくのが良いと、聞いたこともある。

しかし凛子はすぐに、自分が身の程知らずであったことを悟るのだった。

「へぇ、福島まで。わざわざ」

「わざわざ」を強調した言い方と、義母の見透かすような視線が、凛子の鼓動を早める。

黙って俯く凛子をしばらく見つめたあと、義母は自信に溢れた声を出した。

「そやけど和食やったら、やっぱり京都が一番とちがう?」

義母が凛子にこうして尋ねるとき、それは質問ではない。

「…そうですね」

どうにか作った笑顔を義母に向ける。

すると義母は思い出したように、ふたたびとんでもない提案をしたのだ。

「そうやわ。これからはできるだけ毎週末、ふたりでうちに来なさい。週に一度くらい皆で食事しいひんと。ねぇ、拓真?」

−毎週末…!?

地獄のごとき提案に凛子は絶句し、隣に座る拓真を盗み見た。

しかし彼は、ただ静かに「うん」と言っただけだ。

その無責任な横顔に、凛子はいよいよ拓真に苛立ちを覚えた。そして、すべてを悟った。

拓真と結婚…つまり、京野家へ嫁ぐということは、この姑の言いなりになって生きることと等しい。

凛子の未来に横たわっているのは、ただただ灰色の絶望なのだ、と。

会いたい人


その、翌週のことだ。凛子はついにある行動に出た。

竜太が凛子に告げた、「他の生き方も選べる」という言葉。

それがどういうことか、凛子にはまだ具体的に像を結ぶことは難しい。しかしだからこそ今、会っておきたい人がいた。


「凛ちゃん、予約ありがとう。私ここ、初めてやわ」

五条にあるフレンチ『ブリーク』で、凛子の向かいに座るのは…桜子だ。

ここは京都の街中にあるものの隠れ家的なお店。知った顔に会う確率が低いと思い、凛子が指定した。

「こちらこそ、夜に呼び出してすみません。…でも、どうし......


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