京都ちゃん Vol.7

稼いでいても“サラリーマン”はお断り。家柄と資産が何より大事な、京おんなの結婚観

感情の爆発


ゆりえとのランチを終えて実家に戻ると、母が何やら興奮気味に凛子を手招いた。

「凛ちゃん、ちょっとこれ見て」

母が広げているのは、古い写真が収められている年季の入ったアルバムだ。その中の1枚を、母は凛子に指し示す。

「面白いぐらい凛ちゃんとそっくりやろ。結婚式の時の写真やから…今の凛ちゃんよりもっと若いけどねぇ」

そう言って母は、心から嬉しそうに笑っている。その笑顔に一点の曇りもないことを見れば、彼女の結婚生活が幸せなものだったことがわかる。

しかしよくよく思い返してみれば、まだ凛子が幼いころ、母が夜中にこっそりと一人涙している姿を見たことがある気もするのだ。

もしかするとあれは、父方の祖母、つまり母にとっての姑に、何か嫌味でも言われていたのかもしれない。…凛子が知らないだけで、母もずっと我慢していたのかもしれない。

「ねぇ…お母さんは結婚する時、迷わんかったん?」

そんな質問が、口をついて出た。

凛子の言葉に母は一瞬、目を見開く。しかしその表情はすぐに、とぼけた顔に変わった。

「どうやったかな。もう昔のことすぎて、忘れてしまったわぁ」

母があっけらかんと笑うので、凛子もつられて笑顔になる。すると母は凛子の顔を覗き込み、穏やかな口調で続けるのだった。

「もしかしたら、迷ってたかもしれんね。でもお母さんは、お父さんと結婚するって決めて正解やったよ。と言うより、お父さんと二人で正解にしてきたんかな。…そういうもんやよ、結婚は」

「ふーん…そっか…」

母の言葉は、さすがの含蓄がある。しかし納得はするものの、同時に凛子は自身の未来を改めて悲観してしまう。

自分と拓真に、この選択を正しかったと思える日などやってくるだろうか…?

様子を伺うような母の視線を感じて、凛子はそっと踵を返すと静かに部屋へ戻った。


その夜、そろそろ寝ようかというタイミングで、電話が鳴った。

「もしもし、凛ちゃん?今週末の件で連絡したんやけど…」

声の主は、拓真。凛子の反応を伺うように、その先を口ごもる。一応、凛子が義母の言動を苦痛に感じていることは認識しているのだろう。

−わかってるんやったら......


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