京都ちゃん Vol.6

婚約破棄をした女には「はみ出し者」のレッテル。悪目立ちは御法度の、京おんなソサエティ

「営業まわりは、東京にいる兄の知り合いが手伝ってくれることになって。動き始めたら何もかもが順調に進んで…自分でもびっくりしてる。

両親も…東京に行くこと、最初はもう、絶対に断固反対って感じやったけど、何度も説得してようやく私の本気を分かってくれたみたいで。

気づいたら父が、青山に住むところまで用意してくれてた(笑)これからは、自分の力で生活するって私、言うたのに。いつまでも、娘が心配なんやろうね」

嬉しそうに、饒舌に話す桜子。その声から、顔つきから、エネルギーが満ち溢れている。

その姿はいつも以上に美しく輝いて見えて、凛子は憧れのため息をついた。

「桜子さん…ほんまにすごい」

尊敬の念とともに、凛子は彼女を羨ましいとさえ思った。

光を放つ、自らの夢に向かって突き進む桜子。それに比べて、自分は…。

−これからは毎週末、京野の家に来なさい。

義母の言葉、そして問題を直視しない婚約者・拓真の、頼りない横顔が思い出される。

「そうやわ、今日は私が凛ちゃんの話を聞く日や。ペラペラ喋ってたらあかんね」

苦い気持ちが、顔に出てしまっていただろうか。

桜子が申し訳なさそうに、凛子の顔を覗き込む。

「…いえ。先に桜子さんのお話聞けて良かったです。自分の気持ちを再確認できたというか」

噛みしめるようにそう言うと、凛子は思い切って口を開いた。

ずっと、心の奥に押し込めてきた。言葉にしてしまったら最後、自分の思いを止められなくなりそうで。だけど−。

「私…婚約破棄したいと思ってます」


小さく、しかしはっきりとした凛子の言葉に、桜子はわかりやすく目を丸くした。

−婚約破棄−

心の奥底に、思いはずっとあった。しかし言葉にすると、その響きは想像以上に重い。

にわかに現実味を帯びた、不穏な未来。ざわつく胸を抑えるように、凛子は黙って俯く。

「凛ちゃ......


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