京都ちゃん Vol.5

京都ちゃん:誰も逆らえない鬼姑から、新たに課された地獄のルール

京都に3代以上継続して住まう家の娘だけが名乗ることを許される、“京おんな”の呼称。

生粋の京おんなである鶴田凛子(26歳)は、西陣で呉服店を300年以上営む京野家の跡取り息子・京野拓真と婚約中。

しかし過干渉の義母にすべてを仕切られる窮屈な縁談に、早くも疑問を感じ始める。

そんな中、憧れの先輩・南條桜子から聞かされた婚約破棄の事実とその本音。桜子に共感を覚える凛子を、義母の横暴がさらに苦しめる。

我慢の限界に達した時、ちょうど帰省していた京大卒・東京のIT企業で働く竜太から誘いが。

行くべきではないと思いつつ、婚約者・拓真に嘘をつき、凛子は竜太と密会するのだった。


−残念、一足遅かったなぁ。

竜太の言葉、そして思いがけない彼の真剣な眼差しは、凛子の心拍を乱した。

気の利いた返しも、軽く流すこともできず黙り込んでしまった凛子を見て、竜太は困ったように笑う。

「そんな顔しんといて(笑)」

誤魔化すように日本酒を注ぎ、お猪口を口元へと運ぶ。凛子はそんな彼の様子を、スローモーションのように眺めた。

「凛ちゃんは、その人と…婚約して幸せなん?」

沈黙を破った竜太の問いに、凛子はまたしても答えられない。

「凛ちゃんが幸せならそれでいい。でも、もしそうじゃないんやったら…余計なお世話かもしれんけど、これだけ言わせて」

竜太の口調は終始穏やかで、決して責めや押し付けを感じない。

だからこそ、凛子の心にすっと入り込む響きがあった。

「凛ちゃんはまだ若い。遠慮したり我慢し続けて生きるには先が長すぎる思うよ。周りを気遣うのはいいとこやけど…凛ちゃんは他の生き方も選べるんやから」

−他の生き方、って…?

凛子は目だけでそう竜太に尋ねたが、彼はそれ以上、何も言ってくれなかった。

そして凛子もまた、その先を口に出さなかった。

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