京都ちゃん Vol.4

京都ちゃん:箱入りお嬢様の秘め事…婚約者を裏切ってまで、別の男と密会した夜

密会の夜


「凛ちゃん、こっち。ほんまに久しぶりやなぁ!」

大阪・福島にあるミシュランひとつ星の割烹『楽心』

暖簾をくぐり店に入ると、竜太はすでにカウンターで凛子を待っていた。

「久しぶり…やね」

竜太と最後に会ったのは、彼が大学院を卒業し、上京した3年前だ。

開業医の長男である竜太は、(1つ年上ではあるが)凛子と同じノートルダム小学校出身である。そのため親同士も顔見知りであり、どこからともなく噂が耳に入る。

中学から洛星に進学した彼は成績優秀で、当然のごとく医学部に進むものと誰しもが思っていた。

しかし京都大学に進学する際、彼は医学部を選ばなかった。

当時は父親と相当揉めたようだが、その後、竜太の弟が無事に医学部進学を果たしたことでどうにか折り合いがついたというような話を聞いたことがある。

親と争ってまで進路を変える竜太を、親友のゆりえは「変わった人」と評したが、そこまでして我が道を通す彼を、凛子は純粋に「すごいなぁ」と思っていた。

「凛ちゃん、なんも変わらんね」

そう言って、目を細めて笑う竜太は、以前より随分洗練され、大人びて見えた。

歳で言えば婚約者の拓真のほうが竜太より5歳も上なのだが、比べようのない安定感がある。

社会に出て、東京で揉まれ、仕事をしている男が持つ色気、だろうか。

そういうものに価値を見出したことなどこれまで一度もなかったが、この時初めて、凛子はそれを「眩しい」と思った。


竜太とは、ただただ他愛のない話をした。

思い出話がほとんどで、時々、竜太の仕事の話や東京での生活を教えてもらったり。

彼は今、会社近くの六本木に住んでいるのだという。

とはいえ、それを話す竜太は非常に淡々としていて、港区男子と呼ばれる人たちのようなギラギラした声色は......


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