悪妻 Vol.10

悪妻:男と女は、どこまでもすれ違う。「穏やかな日常が欲しい」と願った夫の最後の決断

東京には、いろいろな妻達がいる。

良き妻であり、賢い母でもある良妻賢母。

夫に愛される術を心得た、愛され妻。

そして、あまり公には語られることのない、悪妻ー。

これは、期せずして「悪妻」を娶ってしまった男の物語である。

女性の美に並々ならぬ執着を持つ藤田は、若く美しい妻・絵里子結婚する。

だが、奔放すぎる美貌の妻との暮らしに限界を感じ、別離を考えるまでになる。

妻・絵里子の想いをよそに、小野が主催するクリスマスパーティに向かった藤田は?


“少人数”のホームパーティ


「わぁ!クリュッグ持ってきてくださったんですか?嬉しい!!」

小野は、心底嬉しそうに友人たちにシャンパンを見せびらかす。藤田は、たかがシャンパンでここまで喜ばれるとは思っておらず、その笑顔を見て緊張がほぐれた。

小野の自宅に来るのは、これで2度目になる。笹塚駅からほど近い広めの1LDK。

女性の独り住まいも多いらしく、セキュリティのしっかりとした割と良いマンションだ。

少人数ということで、室内には藤田を入れて5人しかいない。テーブルには、小野が作ったというローストビーフや、キッシュ、サラダなどが彩りよく並べられている。

藤田がいつも招かれているような、タワーマンションで開かれるホームパーティーとは、雰囲気が圧倒的に違う。

家庭的で、少しばかり洗練さに欠けていて、でも温かい。

必死で友人たちや自分をもてなしてくれる小野に、藤田は段々と本気で惹かれていくのを感じた。

ひとり、またひとりと客が帰ってしまっても、小野は藤田に酒を勧めることをやめない。

とうとう2人きりになってしまったが、藤田は気まずさを感じるどころか、居心地の良さを覚えた。

小野には、話したことを何でも受け入れてくれるような、そんな包容力を感じる。

絵里子のことを聞かれたのでふいに愚痴ると、小野は悲しそうな目で自分を見つめながらこう言った。

「私なら、藤田さんに絶対にそんな思いさせないのに…。」

藤田はこの夜、吹き飛びそうな理性を何とか保ちながら、小野の家を後にした。

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