悪妻 Vol.4

悪妻:麻痺する感覚、上昇する幸福度。若い妻に翻弄される夫の儚い夢とは?

東京には、いろいろな妻達がいる。

良き妻であり、賢い母でもある良妻賢母。

夫に愛される術を心得た、愛され妻。

そして、あまり公には語られることのない、悪妻ー。

これは、期せずして「悪妻」を娶ってしまった男の物語である。

女性の美に並々ならぬ執着を持つ男、藤田。自由奔放な妻、絵里子は、藤田の両親の前でも自説を展開し、周囲を驚愕させる。


職場の人々


「藤田さん、ご結婚されたんですよね。おめでとうございます。」

昼下がりの社内で、数人に囲まれた。

藤田は、基本的には社内の人間とは最低限の付き合いしかしないことにしている。

飲み会にはやむなく参加するが、そうした場で酔って醜態を晒したり本音やプライベートを吐露し合う付き合いは最低だ。そうしたことは、いかにも仕事ができない男がすることだ。

よって藤田のプライベートはひた隠しにされてきたが、おおっぴらに結婚指輪をせずとも、結婚したという事実が広まってしまうのが日本の大手企業なのかもしれない。

「ありがとう。いや、遅すぎるんだけどね。」

藤田は極めて外向きの笑顔で答える。その中の1人、小野という女がこちらの空気も読まずズケズケと踏み込んできた。

「奥さま、どんな方なんですか?写真見たいな〜。」

見たい、という声がうるさいので、しぶしぶと両親との食事会の時の写真を見せた。男達は若く美しい妻を素直に羨ましがり、女達は奇妙な間を挟む。

「…凄く若い奥様ですよね。20歳くらいに見える。」

「どんなところを好きになったんですか?」

含んだような言い方をする女だった。君と違って若く美しいところに決まってるじゃないか、という言葉が喉まで出かけたが、寸でのところで押し留めることに成功した。

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