悪妻 Vol.1

悪妻:彼女は天使か、悪魔か?とある女に魅せられた男の苦難が始まった日

東京には、いろいろな妻達がいる。

良き妻であり、賢い母でもある良妻賢母。

夫に愛される術を心得た、愛され妻。

そして、あまり公には語られることのない、悪妻ー。

これは、期せずして「悪妻」を娶ってしまった男の物語である。


世の中の男は、間違っているんだよ


世の中の男は、大変な勘違いをしている。

妻というのは従順で、貞淑で、倹約家なものだと。

だが藤田直樹は、今自分の横にいる妻・絵里子を眺めながらその考えに異を唱えたいと思っていたー。



藤田直樹は、極めて平凡なサラリーマンだった。

もっとも平凡というのはあくまで藤田の自称であって、周囲の人間は彼の忍耐強さと実直な仕事ぶりを高く評価していた。人によっては、彼を成功した企業人と呼ぶかもしれない。

大手町に本社を構える大手通信企業で順当に昇級し、今年で39歳になる。実家はなかなかの資産家で、既に祖父から譲り受けた不動産もいくつか所有していた。

藤田は、ほとんどの事柄にこだわりを持たない。

自宅のインテリアも、ただ目障りでなければ良いという考えだ。着るものにも無頓着で、不潔でなければ構わない。

だが、ただ2つ。

そんな藤田が特別なこだわりを見せるものがある。

一つは「食」だ。食べたものを写真に収め、SNSなどに記録したりするわけではないが、食には並々ならぬ関心を持っている。

ある程度は店のランクを気にするが、値段が高ければ良い、というわけではない。彼なりの指針を持ってして、東京中の店を開拓することを趣味としている。

そして、もう一つ。

このもう一つのこだわりが、この男の人生を狂わせてしまったと言っても過言ではなかった。

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