悪妻 Vol.2

悪妻:逆らわないのは怖いからではない、美しいから。正常な判断力を狂わす魔性の女

東京には、いろいろな妻達がいる。

良き妻であり、賢い母でもある良妻賢母。

夫に愛される術を心得た、愛され妻。

そして、あまり公には語られることのない、悪妻ー。

これは、期せずして「悪妻」を娶ってしまった男の物語である。

女性の美に並々ならぬ執着を持つ男・藤田。そんな藤田が選んだ妻・絵里子とは一体どんな女なのだろうか?


「妻」らしくない妻、絵里子


「藤田さん。私今夜はご飯いらないから、一人で好きなものを食べてね。」

月曜日の朝。

結婚と同時に買ったアンティークの鏡台の前に座りながら、絵里子はこちらを見ようともせずに言い放つ。

化粧をしているようには全く見えないのに、いつもこうして鏡台の前に座ると小1時間は顔にあれこれ塗りたくってその場を動かない。

「好きなもの、か…。僕は、できれば君と一緒に食事をしたいんだけどな。」

美しい女を眺めながら食事をするのが何よりの道楽である藤田は、絵里子と結婚したら晴れて毎日そうした幸せが得られると思っていた。

だが彼女は夜、自分の気分で好きにどこかへ出かけてしまう。

絵里子からの反応がないので、藤田は続けた。

「今日はどこに行くの?」

鏡の前で一生懸命何かを塗りたくる絵里子の方に向かいながら声をかける。鏡の中の絵里子と目が合った。

あの目だ。出会った時に、強烈に惹かれたあの強い眼差し。

「そういう風に、細かいことを聞かないで。私、束縛されるのが一番嫌いなのよ。それなのにあなたと結婚したんだから、これくらいは許してもらわないと。」

こちらへは一度も振り向こうともしない。

藤田は大きくため息をついて、仕方なく会社へ行く準備を始めた。

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