悪妻 Vol.3

悪妻:少しずつ判明する、妻の本当の姿。果たしてこの結婚は間違っていたのか?

東京には、いろいろな妻達がいる。

良き妻であり、賢い母でもある良妻賢母。

夫に愛される術を心得た、愛され妻。

そして、あまり公には語られることのない、悪妻ー。

これは、期せずして「悪妻」を娶ってしまった男の物語である。

女性の美に並々ならぬ執着を持つ男・藤田。自由奔放な妻・絵里子を連れて、藤田の家族に会いに行くことになった。


両親との顔合わせ、まずは及第点


「今日は、本当にありがとうございます。先日は緊張してしまい、きちんとしたご挨拶も出来ずに申し訳ありまませんでした。」

ホテルオークラ東京 別館のロビーで、両親に深々と頭を下げながら挨拶する絵里子を見て、藤田は一瞬ギョッとした。

ーこれが、あの絵里子なのだろうか?

いかにも貞淑で夫を立てる妻、と言った風である。

絵里子は一礼したまま、しばらく動かない。ゆっくりと顔を上げたと思ったら、微笑をたたえながら今度は少女のように無邪気に母に話しかける。

「お義母さまのお着物、とっても素敵。」

昔から着道楽で日舞の師範の免状まで持っている母は、あからさまに機嫌が良くなったようだ。絵里子の調子に合わせ、弾んだ声を出す。

「もうおばあちゃんなのに衣装だけは派手好みで、お恥ずかしいわ。絵里子さんさえ良かったら、今度家にある若い人向けの訪問着なんかも是非一度見にいらしてね。たくさんあるのよ。」

本当ですか?と素直に顔を輝かせる絵里子は、藤田が知るマイペースな絵里子と同一人物とはまるで思えない。

だが、自分の母親と楽しげに話している様子を見て、藤田は大いに満足感を覚える。

ー贅沢だなんだと言っても、俺の両親にこうして愛想よく出来るなんて立派じゃないか。

藤田なりに緊張していた食事会だったが、絵里子の予想以上の”良妻”ぶりに藤田は思わず気を良くしネクタイを緩める。

が、しかし。

喜んだのも束の間、いつもの絵里子らしさがこの後でてくることになった。

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