アモーレの反乱 Vol.10

アモーレの反乱:「僕を捨てることを許そう」主導権を捨てられない年上夫のプライド

港区在住。遊びつくした男が、40歳で結婚を決意。

妻には、15歳年下で世間知らずな箱入り娘を選んだ。

なにも知らない彼女を「一流の女性」に育てたい。そんな願望もあった。

誰もが羨むリッチで幸せな結婚生活を送り、夫婦関係もうまくいっていたはず…だったのに。

4年後、妻が何の前触れもなく離婚を切り出す。しかも、思いもよらぬ「離婚条件」を提示して。

夫・昌宏(まさひろ)に突然離婚を切り出した妻・利奈(りな)。別居していた夫に職場で待ち伏せされ、強引にマンションでの話し合いが始まったが、夫が突然激昂したのだった。


夫が近づいてきた、と思った次の瞬間、強く手を引かれ体が回る感覚に目を閉じた。

一瞬何が起こったのか分からなかった。

背中に感じるクッションの感覚。そして、息がかかる程近くに彼の顔を見上げている。ソファーに引き倒されたのだ。こんなことをされたのは初めてで、恐怖を覚えてもよさそうなのに。

「笑うな。」

私に馬乗りになり、射るように睨みながら発せられた夫の言葉に、自分が笑っていたことに気が付く。不思議と怖くない。それどころか私が今抱いている感情は「喜び」だ。

―あなたを笑ってるんじゃない。嬉しくて微笑んでいるの。

今まで夫が私の事にむきになったことなどなかった。彼にとって私はそれほどの存在じゃなかったからだ。

「男がいるのか」とか、「僕との結婚で得たものがわかっているのか」とか、私にとって腹が立つ言葉ばかりだったとしても、今彼は「冷静な仮面」を外し、我を失い私に向かってきている。

そう思うと、胸の奥がギュッとなり、思わず彼に手をのばしかけた自分に驚く。

―私、今、この人のことを抱きしめようとした?

自分に湧き上がった感情に戸惑い、行き場を失った手のひらをきつく握りしめると、その拳で彼の胸を押し返しながら言った。

「離れてくれませんか。」

精一杯冷静を装ったつもりだが、震えずに言えただろうか?

今なら、私たちはきっと本音で話し合える。私も全ての思いをさらけ出そう。たとえそのせいで、これが私たちの最後の話し合いになったとしても。

私は期待して彼の反応を待った。

彼は、私の言葉など聞こえていないかのように、馬乗りのまま私の顔をしばらく見つめていたが、しばらくすると溜息とともに目を閉じた。そして。

「利奈…今日で終わらせよう。君に振り回されるのは、これ以上耐えられそうにない。」

そこまで言い切ると私から離れ、続けた。

「君が僕から羽ばたいていくということも止めない。君が望むのならもう理由も聞かないよ。」

さっきまで感じていた喜びが、急激に冷めていく。そして、彼が深いため息と共に発した言葉は…。

「君が僕を捨てることを、許そうと思う。…離婚を許すよ。」

―ああ。この人はこんな時までも、最後まで主導権を握ろうとするのか。

目の奥が真っ赤に染まる。気が付けば今度は私が彼につかみかかっていた。

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