2018.08.24
ノリオとジュリエット Vol.12この世には、本人の力だけでどうにもならないことがある。
「生まれ」や「家柄」は、その最たるもの。
誰も傷つけず、傷つかずに生きていきたければ、決められた階層を飛び越えようなどと願わないに限る。
身の程をわきまえること。
それこそが、幸せになるための必要条件なのだから。
「ノリオとジュリエット」一挙に全話おさらい!
第1話:初夏の鴨川で出会った謎多き美女。凡庸なサラリーマンが、運命の恋に落ちた夜
−私、“普通”の人生じゃ嫌なの−
かつて、そう言い残して去った女の顔を、紀夫は忘れられない。いや、違う。忘れさせてもらえない、と言ったほうが正しいか。彼女とはもう3年以上会っていないし、すでに綺麗さっぱり未練もない。
しかし彼女…一二三薫(ひふみ・かおる)は、“普通”のサラリーマンである一ツ橋紀夫(ひとつばし・のりお)の前にも、日常的に現れる。
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第2話:ドライブデートなのに駅集合、駅解散。絶対に家を教えてくれない女の謎
「俺が普通なんは認めるけど、そもそも世の中の8割は普通やろ」
誰もが頷く正論を述べると、夏子も「はは、確かに」とけらけら笑った。
しかしすぐに真面目な表情に戻ると、ふたたびよくわからないことを口にするのだった。
「だとしたら、樹里が特別なんかも。あの子は2割の側に存在しているのに、8割の人と同じ価値観で生きてる」
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第3話:「家に行ってもいい?」勝算ナシだった清純派美女からの、大胆な誘い
「そういや、お前これ見た?」
すべての肉を焼き終えたタイミングで、龍之介が思い出したようにスマホを取り出した。
「薫も大変だよなぁ。あることないこと騒がれて」
−薫…?
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第4話:超がつくお嬢様からの積極アプローチに、庶民の男が陥落した夜
京都駅からさらに南、竹田駅から徒歩3分の場所に紀夫の家はある。樹里は「ここ、初めて降りた」と言ったが、それもそうだろうと頷ける。
紀夫がここに住んでいるのには理由がある(勤め先に近い&実家の奈良に帰りやすい)が、御所南で暮らす樹里がわざわざ来る場所ではない。
勧められるがまま、そっとソファに腰を下ろす樹里。違和感しか感じないその光景を眺めながら、紀夫はあることを確認するべく彼女に問いかけた。
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第5話:3年ぶりに京都へ戻った元カノと偶然の再会。“普通じゃない”人生を送る美女の、光と闇
「仕事…しばらく休むことになって」
「え…?」
割り切った声だったが、空元気は明らかだ。
「それって、もしかして例の記事のせい…?あんな根も葉もないゴシップで?」
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第6話:「ガツガツしてて、怖い」京都のご令嬢が、他県出身の庶民女を嫌う理由
「なんか、すごい親しそうやったから心配しててん。私…実はああいうタイプの女性、苦手で」
「え?」
思いがけない発言だったため聞き返してしまったが、とはいえ樹里の言い方に他意はなかった。
しかし興味本位で「ああいうタイプって?」と尋ねてみると、樹里は苦手な理由を無邪気に説明してくれた。
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第7話:京都のご令嬢と禁断の一泊旅行。恋に溺れる2人の密会と、破滅へのカウントダウン
「大丈夫やよ。夏子が口裏合わせてくれるし。ね?」
ところが樹里はどこまでもポジティブで、「私、淡路島で行きたいお鮨屋さんがあって!」などとどんどん話を進めようとする。そんな樹里の様子はともすると、どうにもならない現実から逃げようとしているかのようにも見えた。
しかしながら結局は紀夫も、危惧していながら目先の欲求に負けてしまう。樹里に「ね、お願い」などと懇願されてしまうと、断ることなどできなかった。
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第8話:「手切れ金500万で、別れてほしい」凡庸なサラリーマンを挑発する、招かれざる客の正体
しまった。気安く話すんじゃなかった。相変わらず配慮の足りない自分を後悔しながら、紀夫は薫を宥めるように弁解する。
しかしその樹里を庇う発言が、ますます薫をヒートアップさせてしまうのだった。
「あのね紀夫。彼女がその許婚を捨てて紀夫を選ぶなんてこと、ありえへんよ?彼女が何て言ったか知らないけど、私にはわかる。
…だって、私も同じやったから」
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第9話:金より愛。京都・老舗和菓子屋のご令嬢が、愛する庶民男のためにすべてを捨てた夜
「男の人ってはっきり言わなわからへんものなんかな?気を使って失礼のないよう断ってるのに、それでもしつこく誘ってくるから嫌になるわ」
「…へぇ。薫でも、はっきり物言われへん相手とかいるんやな」
薫にちょっかいを出している相手が誰なのか、まったく気にならないといえば嘘になる。
しかしそんな心の内を悟られぬよう、冗談半分でからかった。するとそれを聞いた薫が、まさかの名を口にしたのだ。
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第10話:京都の名家を捨てたご令嬢と、束の間の蜜月を過ごすも…。愛に溺れた庶民男に迫る、非情な現実
紀夫がいよいよ「このままじゃダメだ」と気がついたのは、樹里が紀夫の家で生活を始めて1週間が経つ頃だった。
いや、本当は最初からわかっていた。見て見ぬふりをしていただけで。
しかしようやく現実と向かい合う気になったのは、他ならぬ親友・龍之介と、会社同期・夏子のカップルを目の当たりにしたからだった。
第10話の続きはこちら
第11話:結婚に、恋や愛は必要ない。格差婚の現実に打ちのめされた、平凡すぎる男の絶望
「今、僕は樹里さんと真剣にお付き合いをさせていただいています。彼女も、同じ気持ちで」
紀夫の言葉に母親の眉毛がピクリと動き、その場の空気がピンと張りつめた。
「彼女に、決められた結婚相手がいることは知っています。それでも僕は、結婚を前提にお付き合いを続けたいと思っています。まだ出会って間もないですが、彼女も同じ気持ちで…」
「一ツ橋さん」
紀夫が目をそらさずはっきり、堂々と言ったセリフを、しかし母親は強引に遮った。
第11話の続きはこちら
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