ノリオとジュリエット Vol.2

ノリオとジュリエット:ドライブデートなのに駅集合、駅解散。絶対に家を教えてくれない女の謎

この世には、本人の力だけでどうにもならないことがある。

「生まれ」や「家柄」は、その最たるもの。

立命館大学を卒業後、ゲーム機器メーカーの京都本社に勤める一ツ橋紀夫(ひとつばし・のりお)は正真正銘の庶民。

“普通”で平凡な日々を送る紀夫だったが、食事会でどこか謎に包まれた美女・萬田樹里(まんだ・じゅり)と出会う

幼く見えるのに大人びた横顔を見せる樹里に心惹かれる紀夫だが、彼女は自分のことを多く語らず、あまり話せないままその日は別れてしまう。

しかし翌朝、樹里から思いがけず「ふたりで会いたい」とLINEが


夏子の洞察


「わ、びっくりした!」

いつから近くにいたのだろう。

通勤途中、まもなく会社に着こうというところで、同期の夏子が後ろからひょい、と顔を出した。

「また、ぼーっとして」

呆れたように笑う夏子は「まあ、いつものことやけど」と付け加え、再びけらけらと笑った。

「昨日は楽しかったなぁ。川床、最っ高に気持ちよかったし」

「うん」

夏子に相槌をうちながらも、紀夫の脳裏に浮かぶのは樹里の横顔だ。

…あのとき、不意に目があった瞬間の、胸が高鳴る感覚も。


「…なぁ紀夫、樹里のことどう思った?」

まるで心を見透かすように夏子が急に樹里の名前を出したため、紀夫は思わず目を泳がせた。

「ど、どうって?…いい子やな、と思ったけど」

平静を装い当たり障りのない言葉で応じてはみたものの、どうにも歯切れが悪い。昔から、嘘がつけない男なのだ。

「いい子やで、樹里は。これは私の勘やけど、紀夫と樹里ってすごい合う気がする。...ふたりとも、いい意味ですごく“普通”なんよ」

「なんや、それ」

おかしなことを言う夏子に、紀夫は鼻で笑ってみせた。

「俺が普通なんは認めるけど、そもそも世の中の8割は普通やろ」

誰もが頷く正論を述べると、夏子も「はは、確かに」とけらけら笑った。

しかしすぐに真面目な表情に戻ると、ふたたびよくわからないことを口にするのだった。

「だとしたら、樹里が特別なんかも。あの子は2割の側に存在しているのに、8割の人と同じ価値観で生きてる」

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