2017.01.21
SPECIAL TALK Vol.282020年のニューリーダーたちに告ぐ
日本の芸能文化を支える松竹。歌舞伎、新派や新喜劇などの伝統芸能をはじめとした演劇、映画なども手掛ける。同社の社長を務める迫本淳一氏は、慶應義塾で幼稚舎から大学までを過ごし、27歳のとき弁護士を志す。
10年にも及んだ司法試験の勉強で、人生初の深い挫折を味わうものの、自らの行動力と努力によりその状況を切り拓いていった。そんな迫本氏の半生から、次世代のリーダーの成功へのヒントを見い出す。
金丸:本日はお越しいただき、ありがとうございます。
迫本:こちらこそ、ありがとうございます。
金丸:迫本社長のユニークな経歴に惹かれまして、今回お招きいたしました。
迫本:それは光栄です。銀座は当社から歩いて来れる距離ですが、このお店には初めて来ました。
金丸:こちらの日本料理店『茂松』は、昨年10月にオープンしたんですよ。店主の松原さんが手掛ける季節の素材にこだわったお料理を堪能しつつ、迫本社長の半生を伺っていこうと思います。
迫本:すごく楽しみです。
金丸:早速ですが、ご出身はどちらですか?
迫本:東京です。生まれたのは、新宿の病院だと聞いています。
金丸:病院まで教えてくれたのは、迫本社長が初めてです(笑)。ご両親は何をされていたのですか?
迫本:父は本州製紙という大手製紙会社に勤める普通のサラリーマン、母は専業主婦です。母方の祖父である城戸四郎が松竹で映画プロデューサーを務めており、松竹映画の黄金時代を築き上げました。
金丸:松竹とは生まれたときから繋がりがあったんですね。
慶應幼稚舎に入学。スポーツに打ち込んだ少年時代
金丸:迫本社長は幼稚舎から大学まで、慶應義塾だそうですね。
迫本:両親がふたりとも大学受験に失敗して非常に苦労したらしく、子どもにそんな苦労はさせたくないと、大学までストレートで行ける慶應に入りました。
金丸:幼稚舎時代は、どんなお子さんでしたか?
迫本:典型的なガキ大将でしたね。しかもバリバリの体育会系。ラグビーと水泳をやっていました。勉強は上の下ぐらいだったけど、スポーツが得意で。
金丸:幼稚舎からラグビーですか?!
迫本:ラグビーって慶應ではメジャーなんですよ。でも次第にメジャーなものに対する反発心が出てきて、ラグビーから遠ざかっていきました。で、そのあと夢中になったのが水泳です。
金丸:何がきっかけで?
迫本:東京オリンピックですよ。5年生のときに見て大興奮して、すぐに水泳を始めました。そしたら、それまで全然泳げなかったのに、なぜか急にうまくなって、6年生のときには50メートル自由形で、36秒7という幼稚舎の新記録を出しちゃいました。
金丸:それはスゴイ! 水泳といえば、当時はアメリカが圧倒的に強かったですよね。ドン・ショランダー選手が金メダルを獲りまくってて。日本はあんまり強くなかった。
迫本:そう、いまとは比べものにならないくらい弱かったよね。僕は中学の普通部で水泳部に入ったんだけど、やっぱり弱小で。1年生のときに先輩のレースを観に行ったんだけど、それがもうめちゃくちゃ。400メートルリレーはタッチミスで失格になるし、バタフライでは泳いでいる途中で、もう泳げないって立っちゃったりして(笑)。
金丸:ありえない(笑)。
迫本:でも水泳部に入ったものの成績が全然伸びなくて。もやもやしていたら、幼稚舎でお世話になった体育の先生が、「おまえ何やってんだ!」ってスイミングスクールを薦めてくれたんです。ちょうど日本の水泳界を強くしていこうと、スクールができ始めた頃で、小学生でもバタフライができるような本当にレベルの高い子たちが集まっていました。
金丸:そんなに高いレベルの中で練習していたら、上達も速かったのでは?
迫本:最初はついていくのに必死でしたよ。でも、少しでもコーチに認められるようにと食らいついていたら、2年生の春ぐらいからタイムがぐんぐん伸び始めて。それで県大会の100メートル自由形で、神奈川県の学年新記録を作って優勝したんです。
金丸:いきなり神奈川で、1位ですか?! やはり水泳の才能があったんですね。
迫本:確かに3年生のときも県大会で優勝し、関東大会でも優勝しましたけど、全国には通用しないというレベルでした。それでも、水泳でここまでの成績を残したのは、慶應では僕が初めてだったから、多方面から期待されましたね。中学生ながら大学の早慶戦にも公式出場させてもらって、先輩たちに可愛がってもらいました。
金丸:当然、水泳選手になることも考えたんですよね?
迫本:そうですね。でもそのうちに、心臓に持病があることがわかって……。水泳の練習はただでさえ苦しいのに、こんな持病があったらプロを目指すのは難しいなと。
金丸:やるならトップを目指したい。しかし身体的に難しい。大変な葛藤だったと思います。
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