SPECIAL TALK Vol.27

~成長の速度を早めるには、人の何倍も自己犠牲を払うのみ~

2020年のニューリーダーたちに告ぐ

北海道の小さな漁村で海の幸に恵まれて育った少年は、札幌で洋食に出合い、運命が一変する。

フランス料理を究めようと、『帝国ホテル 東京』やフランスの名だたる三ツ星レストランで修業を重ね、30歳にして自身の城を構えた。今や日本を代表するフランス料理人として、世界を股にかけ活躍する。そんな三國シェフの未来を切り拓いたのは、驚くべき行動力と、一度決めたらやり抜く粘り強さだった。

次代のニューリーダーを目指す人にこそ、知っておくべき珠玉のエピソードをとくとご覧あれ。

三國清三氏 オテル・ドゥ・ミクニ オーナーシェフ

1954年北海道生まれ。現在は東京四ツ谷の『オテル・ドゥ・ミクニ』をはじめ、全国14店舗を展開。『ソシエテミクニ』代表取締役。日本フランス料理技術組合代表。称号は美食学名誉博士。公益財団法人東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会顧問。2015年には東京ブランドアンバサダーにも就任。

金丸:本日はお越しいただき、ありがとうございます。とはいえ、三國シェフのお店なので、私が招かれる側ですね。

三國:こちらこそ、よろしくお願いいたします。この『ミクニ マルノウチ』は、100%東京の食材を使ったレストランです。今日は金丸さんに、ぜひ自慢の料理を召し上がっていただきたくて。

金丸:とても楽しみです。でも、全部東京産とはスゴいですね。そんなことできるんですか?

三國:できますよ。お肉も野菜も調味料も、どんな食材も東京でそろいます。八王子でゴーヤを作ったりしていますからね。

金丸:それは知りませんでした。ところで、私と三國シェフは1954年生まれと、同じ午年生まれなんですよね。

三國:僕は北海道、金丸さんは鹿児島と出身は違いますが、同じ時代を生きてきました。

金丸:私は三國シェフのライフストーリーが大好きでして、今日はいろいろと聞かせてください。

北海道の田舎町で育つ貧乏だが、食には恵まれていた

金丸:お生まれは、北海道のどちらですか?

三國:増毛町という日本海に面した小さな町です。高倉健さん主演の『駅 STATION』という映画の舞台にもなりました。

金丸:ご家族は何人ですか?

三國:7人兄弟です。おやじは漁師、おふくろは農家をしていました。昔はニシンがよく獲れていて、増毛には国の重要文化財にもなっている、ニシン御殿があるんですよ。

金丸:では、お父様もニシンで相当稼がれたのでは?

三國:それが、僕が生まれた頃には、まるっきり獲れなくなったそうで。

金丸:何が原因で?

三國:自然現象としか言いようがないですね。とにかく突然パタっといなくなって、御殿どころか貧乏のどん底でした。

金丸:大家族だと大変だったでしょう。

三國:きょうだい全員高校に行けなくて、みんな中卒。でも目の前が海だったから、食べ物だけは豊富でしたね。浜辺に打ち上げられたホヤをおやつ代わりに食べたり、アワビやウニを食べたり。ウニなんて毎日だから飽きてしまって、焼いたり蒸したり工夫してました。

金丸:本当に贅沢ですね。

三國:食べ物の英才教育ですよ。なかでもホヤは、僕にとって特別で。

金丸:というのは?

三國:人間の舌は、甘い、酸っぱい、しょっぱい、苦い、うま味の5つの味を感じられるんですが、そのすべての味があるのは、ホヤだけなんです。

金丸:確かに複雑な味わいですが。

三國:〝海のパイナップル〞とも言われていますよね。そのホヤを毎日食べたおかげで、僕の味覚は鍛えられました。人間は五味を感じることで、見る、聞く、嗅ぐ、触る、味わうの五感が開花する、と言われています。フランスの研究では、12歳ごろまでに五味を体験していない子どもは、体験している子どもに比べて、感受性が乏しいという研究結果も出ています。

金丸:味覚は、人の成長に大きな影響を与えるのですね。

三國:そうなんですよ。小さい頃に五味を感じて味覚を発達させることで、その後の人生が豊かになる。すごく重要なんです。

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