2016.12.21
SPECIAL TALK Vol.27いざ、札幌へ。ハンバーグとの出合いが運命を変える
金丸:ところで子どもの頃は何になりたかったのですか? 将来のイメージはありましたか?
三國:まったくなかったです。兄も姉も中学を卒業すると出稼ぎに行き、実家に仕送りをしてくれました。でも僕はどうしても高校に行きたくて。中学の先生に相談したら「札幌の米屋に丁稚奉公に行けば、寝るところもご飯もあるし、お金ももらえる。夜間学校にも行ける」と教えてくれました。手に職をつけないといけないし、料理人だったら一生食っていけるだろうと思って、調理師学校を目指したんです。食べ物の近くにいれば死にやしないからいいや、くらいの感覚でした。
金丸:それで、札幌に行くわけですね。
三國:15歳のときに。昼は米屋で働き、夜は学校に通うという生活が1年半続きました。
金丸:当時はフランス料理どころか、洋食も珍しい時代です。なぜフランス料理の道に進まれたのですか?
三國:米屋の娘さんが栄養士をしていて、故郷の増毛では見たこともない料理をいろいろ作ってくれました。お肉もたくさん出てきた。お肉って、実家では1年に1度しか食べられないんですよ。家族全員がそろう正月に、みんなで『松尾ジンギスカン』に行って、柔らかい羊肉を食べる。それはもう美味しくて。
金丸:三國少年にとって、肉といえばジンギスカンだったんですね。
三國:そうそう。そんな僕の目の前に、ある日〝ハンバーグ〞なるものが出てきた。「なんだべ?」と思いましたよ。あれって挽き肉だし、ソースが黒いじゃないですか。その頃の僕は挽き肉なんて知らないし、「黒い食べ物は、毒だから絶対食うな」と言われて育ってきたから、直感的にこれは危険だ、と思ったんです。
金丸:子ども心に染み付いていたんですね。黒は毒だと(笑)。
三國:そうですよ。だから、米屋の人たちは、僕にこのハンバーグなる毒を食べさせて、口減らししようとしている、と本気で思いました。当時は不景気だったし。でも周りを見ると、みんな美味しそうに食べている。すごく腹も減っていたんで、恐る恐る箸を入れてみたんです。
金丸:そしたら?
三國:ブワーっと肉汁が出てきて、「ええっ!?」って、びっくりしました。でも恥ずかしくて周りに言えないから、こっそりソースを舐めてみた。そしたら、甘酸っぱい味が口いっぱいに広がって。初めての体験でした。それでみんなの真似をして、ハンバーグにソースをつけて食べてみたら、それはもう未知との遭遇で。
金丸:美味しい、と素直に思えましたか?
三國:美味しいというより、甘酸っぱくて肉が柔らかいことに驚きましたね。だって、ジンギスカンより柔らかいんですよ。噛まなくてもいい。だから、思わずお姉さんに聞いたんです。「これはなんだべ?」って。
金丸:そうか。そのときは、まだハンバーグって知らないから(笑)。
三國:そう、増毛にはなかったから(笑)。それで、ハンバーグだと教えてもらい、私の人生が決まった。「こういう料理を作りたい」と思ったんです。
金丸:運命を変えた瞬間ですね。
三國:純粋に「ハンバーグを作る料理人になりたい」と思いました。すると、お姉さんが「私のハンバーグも美味しいかもしれないけど、『札幌グランドホテル』のハンバーグなんて、私の100倍美味しいのよ」と。
金丸:そう言われると気になります。
三國:ですよね。僕は子どもだったから、『札幌グランドホテル』に行けば、すぐにでもハンバーグが作れると思い込んだわけです。だけど、すぐにお姉さんから「あそこは高卒以上じゃないと入れない」と言われ、無理だとわかった。でも僕の頭の中は、もうハンバーグでいっぱいで。あとはどうやったら入れるかだけを考えるようになりました。
【SPECIAL TALK】の記事一覧
2024.11.21
Vol.122
~自分の体を認めることが、自分を好きになるための第一歩になる。~
2024.10.21
Vol.121
~スポーツの喜びをより多くの人が体験できるよう、これからも挑戦はやめない。~
2024.09.21
Vol.120
~日本の農業が続くための仕組みを作り、アップデートできるよう挑み続ける~
2024.08.21
Vol.119
~すべてを制覇したい気持ちは変わらない。経営陣になっても燃えたぎる闘志がある~
2024.07.20
Vol.118
~歌舞伎役者を夢見た少女だから、歌舞伎役者の母としてできることがある~
2024.06.21
Vol.117
~1杯で幸せになる利他的なコーヒーを目指して~
2024.05.21
Vol.116
~多くの人の期待と希望を背負う街づくりほど、面白い仕事はない。~
2024.04.19
Vol.115
~この楽器だからこそできる表現を。歴史ある箏を武器に世界を目指す~
2024.03.21
Vol.114
~勝負の気持ちから感謝の気持ちに。青森の伝統を守り、盛り上げたい~
2024.02.21
Vol.113
~学問という知的な武器を子どもたちに。学びの体験をアップデートして日本を変える~
おすすめ記事
2016.11.21
SPECIAL TALK Vol.26
~自然と調和する文化で育った日本人こそ、世界の食料危機を救える~
- PR
2024.11.20
銀座で女性と過ごす夜。アイリッシュウイスキーが引き寄せた、2人だけの密やかな高揚とは
2015.01.22
絶対に負けられない接待が、今宵はある
受注後の社長会食。『旬房』の個室で堅い握手
2015.10.01
究極の接待は超名店の貸切!貸切OKの名店5選
- PR
2024.11.18
総勢100名に当たる!西友&東急ストアで「スプリングバレー」を買って東カレ厳選グルメをもらおう!
- PR
2024.11.21
クリスマスは絶景を望むホテルデートへ!彼女がワッと喜ぶ、とっておきの夜を丸の内で過ごすなら…
2023.08.30
ハラスメント探偵~解決編~
オフィスに家族写真を飾っていたら“セクハラだ”と内部通報された男性社員。会社側のジャッジはいかに!?
2015.11.06
ガイドブックに頼らない、札幌出張で足を運びたい名店たち
2016.10.17
彼が言うなら間違いない!松岡修造が伝授する“デキる人”になるための10ケ条
2019.12.20
ワイワイ気軽な飲み会に!渋谷・恵比寿・目黒のおしゃれな人気店
恵比寿で飲み会なら個室でワイワイ盛り上がろう!仲が深まる名店6選
東京カレンダーショッピング
『佐藤養助商店』:門外不出の技による、喉ごし滑らかな"稲庭干饂飩"
『かに物語』:ふっくらと肉厚な一本爪が2本入ったフレンチカレー
『西岡養鰻』:特製タレ付き!脂の乗った高品質な鰻を土佐備長炭で丁寧に焼き上げた蒲焼
『マルヒラ川村水産』:ご飯に載せて贅沢いくら丼!1粒1粒に旨みが凝縮された、とろける食感の北海道函館産天然いくら
『North Farm Stock』:北海道産ミニトマト使用!糖度が高く、コクとうまみがたっぷり詰まったトマトジュース
『ル・ボヌール 芦屋』:フリーズドライフルーツにホワイトチョコがたっぷりと染み込んだ新感覚スイーツ
『HAL YAMASHITA 東京』:シルクのようななめらかさ!冷え冷えトロリの新食感"ウォーターチョコレート"