SPECIAL TALK Vol.27

~成長の速度を早めるには、人の何倍も自己犠牲を払うのみ~

驚くべき行動力で憧れの職場で働くことに

金丸:それで、何かよい方法はあったのですか?

三國:いや、まったくありません。コネも紹介もないし。それで、どうしたらいいべ、と悶々と過ごしていたとき、調理師学校の卒業記念に、『札幌グランドホテル』でテーブルマナーの講座を受けることになったんです。最後に厨房見学があると聞いて、「僕にはこのチャンスしかない」と決意しました。

金丸:で、何をしたんですか?

三國:全員で52人いたと思うんですが、その一番後ろの列にいて、厨房見学のときに途中ですっと洋食のキッチンに隠れました。

金丸:すごいですね!

三國:そのまま30分ぐらい隠れていたんですけど、真正面にデスクワークをしている大柄な男の人の後ろ姿が見えました。様子を見ていると、どうやら偉い人のようで。それで、僕はすっとその人の後ろに行って、声をかけたんです。

金丸:いきなりで驚いたでしょう?

三國:そりゃもう。振り向いて、びっくりしていましたね。「なんだ、お前、どっから来たんだ!?」って。僕もビビッてしまって、つい「増毛から来ました」と答えました(笑)。そしたら「なんで、そんな遠いところから」という話になり。

金丸:その方は、予想通り偉い方だったんですか?

三國:はい、青木さんという、『札幌グランドホテル』の初代総料理長の息子さんで、実力もナンバーワンでした。それで「どうしてもここで働きたい。何でもやるから、ここに置いてくれないべか」って頼んだんです。自分は中卒だけど、何でもやるからと。

金丸:まるでドラマを見ているようです。

三國:とにかく必死にお願いしていたら、「わかった。ちょうど従業員食堂の飯炊きに欠員が出たから、そこにパートとして入るか?」と聞かれまして。まだ子どもだし、可哀そうに思ったんでしょうね。

金丸:そうして仕事にありついたわけですね。

三國:次の日から働き始めたんですが、従業員だけで何百人もいるんで、とんでもない量のご飯を炊くんですよ。

金丸:大変だとは思わなかったのですか?

三國:まったく。むしろ夕方6時に晩御飯を出し終わったら、何もすることがない。だから、ホテルの隣にあった洗い場に手伝いに行っていました。そこは炭鉱の洗い場で、山ほど溜まった洗い物を、10人くらいの若い炭鉱員が毎晩2時間かけて洗っていたんです。それを僕が代わりにやるもんだから、みんなすごく喜んでくれて。夜のすすきのに連れてってもらい、ラーメンをご馳走になっていました。それに味をしめて、半年ぐらいやっていましたね。

金丸:すごいエネルギーですけど、お金はもらえたんですか?

三國:いやいや、お金なんていらないです。そうやって、がむしゃらに働いていたら、ある日、青木さんに人事課に連れていかれ、特例で正社員にしてもらえました。

金丸:青木さんも三國シェフの働きを認めていたのですね。

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