ハラスメント探偵~通報編~ Vol.10

“頭をポンポン”しながら「頑張れよ」という上司に鳥肌!ハラスメント相談窓口に駆け込むも…

2022年4月からパワハラ防止措置の義務化が大企業だけでなく、中小企業にも適用され1年が経った。

普段、職場上司の指示・指導方法に抱く不満。

それが果たしてハラスメントに当たるのかどうかの判断は難しい。

今回は、ハラスメント窓口の担当者の女性が登場する。彼女が絶叫するほどの出来事とは?

取材・文/風間文子

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あなたは当てはまってない!?気をつけていてもハラスメントする人の3つの傾向


前回は:接待で相手を喜ばせようとした言動をセクハラだと訴えられた。その内容とは!?


ハラスメント相談窓口の担当者・向井小春(32歳)の場合


「ごめん、さおり。実は、例の案件が片付かなくてさ、また行けないや」

そう言って電話を切った向井小春(32歳)は、背中を丸め、ため息をついた。

都市銀行のグループ本社に勤務し、ハラスメント相談窓口の担当者でもある向井は、友人の葉山さおり(32歳)が食事に誘ってくれたというのに、あるセクハラ案件を抱えていた。

その案件とは、都内支店の一般職の女性から寄せられた訴えだった。

彼女が主張するには、同じ支店の男性上司から何度も「頭をポンポン」されたというもの。

その際に性的な発言はなく、あくまで仕事の進捗を気遣う内容なのだが…。相手は、必ず給湯室や廊下など、周囲に人が居ないタイミングで近寄ってくるのだという。

そして最後には決まって「頑張れよ」と、女性の頭をポンポンと軽く叩くのだった。


被害を訴える女性は最初こそ我慢していたそうだが、繰り返し体に触れられる不快さに耐えきれず、勇気を出して「やめてください」と要望したそうだ。

対して男性上司は「僕にとって君は妹みたいなもので、放っておけないんだ」と意に介せず、行為は半年以上にわたって続いているという。

自分のデスクに戻った向井は、当事者2人の人事資料に目を落とした。

被害を訴えているのは支店の窓口業務に従事する飯田詩織(25歳)。そして、行為者とされているのが総合職で入行している今西勝之(33歳)だ。

今西は東大卒で、昇格試験も優秀な成績を収めており、1年前に課長になっている。

銀行における課長職は30代後半で辿り着くのが一般的だといわれるのに対して、今西の場合はスピード出世といっていいだろう。

「…それなのにどうして、こんな軽率な行動で問題を起こすのかしら」

向井は今西の人事評価を手にしながら、なぜこうした事態が起こるのか不思議でならなかった。しかし、いつまでもそんな疑問に頭を使っている暇はないことに気づく。

調査は難航していた。

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