日比谷線の女 Vol.12

日比谷線の女:音信不通も当たり前?! 霞ヶ関のキャリア官僚から感じた選民意識

過去に付き合ったり、関係を持ったりした男たちは、なぜか皆、日比谷線沿線に住んでいた。

そんな、日比谷線の男たちと浮名を流してきた香織は、上京後立て続けにタワーマンションに住む篤志や弁護士の孝太郎と付き合うがどちらもあっけなく終わる。ワンナイト社内恋愛も経験した。涼とは恵比寿での半同棲を経て中目黒で同棲を経験した。築地の健一郎や人形町の祐介など、デート相手はいるものの、結婚を考えられる相手にはなかなか出会えず……?

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恋人が欲しいと思っている時はいい人に巡り合えず、仕事や趣味に没頭している時ほど、いい出会いがありトントン拍子にうまくいく。

長年恋愛市場に身を置いていると、恋愛にまつわるそんな話をよく聞く。実際、香織の周りの女たちにもこのタイプが多かった。

恋人候補を探すため、毎週のように食事会や合コンに繰り出す女たちが、幸せな恋愛を手に入れることは容易ではなかった。着飾り、エステに通い、メイクの腕を磨けば磨く程、恋愛が心休まるものではなく、戦いのようになっていったからだ。

そんな彼女たちが戦いに疲れ、ふと立ち止まって自分の心に正直になろうと、ヨガを始めて健康的な生活を取り入れたり、週末の予定を無理に入れるのをやめて一人の時間を増やしたりすると、いつの間にかパートナーを見つけて幸せを手に入れていることが多かった。

手に入れたパートナーは、それまで狙っていたような年収2,000万以上の男ではなく、東京の平均年収よりもやや上ぐらいの相手がほとんどだったが、彼女たちはそんなことは構わず、幸せそうにしていた。

香織は彼女たちの姿を横目に「本当にそれでいいの?」と半信半疑になることもあった。派手に遊んでいた子ほど普通の会社員と結婚を決めていたからだ。

中途半端に良い思いをしたと自負している香織は、30歳になってなんだか宙ぶらりんだった。だが、28歳の頃をピークに結婚願望は徐々に落ち着いてきていた。

もちろん結婚はしたいと思っているが、20代後半の当時のようにジリジリと何かに追い立てられているような、漠然とした不安は少なくなり、周りの女たちと同じように、変に無理することはやめていた。

開き直りと言ってしまえばそれまでであり、変な自己防衛本能が働いているだけかもしれないがそれでも、福岡から上京した自分が仕事を通してきちんと東京に根を張ることができているという満足感で、少しは満たされていた。

香織が務める旅行会社の企業向け商品企画部というのは、決して華やかな仕事ではない。それでも日々の業務に手を抜かず丁寧にこなし、担当しているクライアントとも良好な関係を続けている。新規で大きな案件も幾つか獲得し、同期の女性の中でも頭一つ出ていると自負していた。

そんな頃、直樹から約3年ぶりに突然の連絡が来た。

直樹は3年前の食事会で知り合ったキャリア官僚だ。東大法学部を卒業後、経済産業省に入省した2歳上の男性。

直樹とは3年前の食事会の後、1度だけデートをしたことがある。デートは楽しく、また行きましょうと言って別れた。

香織はキャリア官僚と聞いて最初は尻込みしていたが、話してみると正義感に溢れ、この国を良くしていきたいと熱く語る彼の前向きな姿に好感を持った。

だが、2回目のデートは結局実現されなかった。デートの計画を立てようと何度かLINEのやり取りをしたが彼からの返事はいつも遅く、一つの質問に対して答えが返ってくるのに1週間近くかかることもあった。

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