日比谷線の女 Vol.7

日比谷線の女:中目黒アトラスタワーでの同棲。火遊びでは済まない、彼の過ち

過去に付き合ったり、関係を持った男たちは、なぜか皆、日比谷線沿線に住んでいた。

そんな、日比谷線の男たちと浮名を流してきた香織は、上京後立て続けにタワーマンションに住む篤志や弁護士の孝太郎と付き合うがどちらもあっけなく終わる。初めてのワンナイト社内恋愛も経験したが、恵比寿に住んでいたとは、彼の転職を機に同棲することになり、香織は東京で初めての幸福な恋愛に浸っていたが……。

日比谷線の女 vol.6:夢と野望に溢れた彼との、恵比寿での濃密な半同棲生活


26歳の香織は、東京で初めての引っ越しをしていた。それも、大好きな彼と同棲するための引っ越しだ。心弾まないわけがなく、荷解き中も彼に聞こえないよう注意しながら、木村カエラの「バタフライ」を口ずさむ。

結婚したわけではないが、結婚へ向けての過程の一つなのだと、同棲を決める時お互いに確認した。

香織も涼も27歳になる年だ。同棲した後、30歳までに結婚すれば、この流れはまさに香織の理想通りだった。

2人が新居に決めたのは中目黒のランドマーク的存在である「中目黒アトラスタワー」。45階建マンションの38階に部屋を借りた。

このマンションを選んだのは香織だった。やはり香織はタワーマンションへの強い執着があったのだ。涼が住み慣れた街・恵比寿で探し「グランドメゾン恵比寿の杜」も候補に挙げたが低層階しか空きがなく恵比寿ではあきらめた。

「代官山アドレスザ・タワー」にはまさに理想的な部屋があったが、家賃が予算をオーバーしていた。

そこで、候補の一つだったこの部屋に決めた。中目黒は涼が住んでいた恵比寿と香織が住んでいた祐天寺のちょうど間。お互いの馴染みのレストランにも通いやすく、飲み会の場所に選ばれることが多い恵比寿や渋谷から、深夜料金でも1,000円強で帰ることができるのも良かった。


それに、おしゃれなカフェやセレクトショップが多いのに、商店街があるためか恵比寿や代官山よりも少しだけ、肩の力を抜いてリラックスできる。安定した同棲生活を送るのに、その緩さが2人にフィットした。

1LDKでリビング13帖、寝室は4.5帖。引越しにかかるマンションの初期費用は香織も少しは出したものの、ほとんどは涼が払ってくれたから家具類は香織が買った。買ったと言っても新調したのはダイニングセットにセミダブルのベッド、ソファぐらいで、全て無印良品とIKEAで揃えた。

本当は目黒通りにあるインテリアショップで揃えたいところだったが、予算の都合で見送ったのだ。結婚が決まったり次の引越しをする時にはもっと吟味し、奮発するつもりでいた。

中目黒にはタワーマンションや高層ビルがあまりなく、香織たちの部屋からは開けた景色が楽しめ、晴れた日の日中は部屋から富士山を一望できる。そんなマンションに住めることが香織はなんだか誇らしかった。

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