日比谷線の女 Vol.4

日比谷線の女:ディープな街・上野に住む先輩と、禁断の社内恋愛に目覚める

過去に付き合ったり、関係を持った男たちは、なぜか皆、日比谷線沿線に住んでいた。

そんな、日比谷線の男たちと浮名を流してきた香織は、上京後立て続けにタワーマンションに住む2人の男と付き合ったが、どちらの恋もあっけなく終わった。その後は初めてのワンナイトで苦い思いを経験することになり、香織の恋愛遍歴は積み重なっていくが……。

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「久しぶりね」

2016年の桜も散り始め、いつもの静寂が戻った上野恩賜公園の『スターバックスコーヒー』で、ソイラテを飲みながら香織は目を細めた。

4月の人事異動でジャカルタから戻ってきた翔太は、香織の会社の先輩であり、昔関係があった男の1人でもある。翔太は数年の間、海外支店を点々としていたが、この4月に日本に戻ってきたばかりだ。

「私を捨てるように海外に行ったあなたを、恨みそうになったこともあるのよ」そう言って笑うと、翔太は気まずそうにしながら「でも俺よりももっと良い人と巡り会えたらしいじゃん」と言って顔をクシャリとして笑った。

今日は翔太から食事に誘われ、湯島の『くろぎ』へ行った帰りに上野公園まで歩いて来たのだ。

翔太との思い出がたくさん詰まったこの公園に、また2人で訪れることになるとは夢にも思わなかった。

帰り際、「幸せにな」と言って右手を上げた彼は、なんだか少し寂しそうだった。

その顔を見て、当時も翔太なりに大切に思ってくれていたのかなと感じると、中途半端に終わった彼との恋に、ようやくケジメがつけられたように思える。

駅のホームへ吸い込まれる彼の背中を見送りながら、香織も少しの寂しさに浸った。



タワマン男との結婚を夢見ていたのは、もう遠い昔であるかのように、25歳になった香織は平凡な社内恋愛を満喫していた。

仕事のストレスで気づけば体重が4kgも増えていた頃、日に日に顔が丸くなる香織を見かねて、同期の真希が当時流行っていた「ビリーズブートキャンプ」のDVDをプレゼントしてくれた。

最初は気が進まなかった香織だが、試しに1度観てみたらすっかりハマり、以来せっせと一人暮らしの部屋で汗を流すこととなった。

入隊して1ヶ月、香織の体重が戻ってきた頃に、その恋愛は始まった。相手は同じ会社の2歳年上で27歳の翔太。旅行コンサルタントとして窓口業務を担当していた香織とは、あまり接点のない海外営業部にいた。

身長177cm、学生時代は陸上競技をやっていたらしく引き締まった身体で、いつも細身のスーツをパリッと着こなしていた。

笑うとクシャリとなるその顔は母性本能をくすぐり、多くの女たちの心を奪ってきたであろうことが読み取れた。

香織も社内で見かける度に素敵だなと思っていたが、接点がない上に社内恋愛はしないと決めていたから、何かを期待することはなかった。

だが、真希が翔太の同期の一人と仲良くなったことで何度か数人で飲む機会があり、香織は彼にときめき、一気に距離を縮めた。

多めのボディタッチや思わせ振りなメールを連発し、初めて2人で飲みに行った日にそのままホテルへ行き、なし崩し的に「これってもう、付き合ってるよね?」と言わせる状況に持ち込んだ。

「付き合おう」と言う会話がなかったことは不満だったが、仕方ないと受け入れることにした。

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