SPECIAL TALK Vol.8

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価値観を変えたリクルートとの出会い

金丸:ジャーナリストの素養を持ちつつ、経済の知識もおありだった。そこから就職先として、リクルートを選ばれたのが非常に興味深く感じます。

杉本:おっしゃる通りで、当初は新聞社や出版社などを受けて、いくつか内定もいただいていました。そういう意味では、リクルートも出版社のひとつとして見ていました。

金丸:就職されたのが1992年ですので、リクルート事件の後ですね。

杉本:どのような会社なのか見てみようと、軽い気持ちで会社説明会に行って出会ったのが、当時人事課長で、現在リンクアンドモチベーションの社長でもある小笹芳央さんでした。そのとき偶然お話しする機会を得まして、小笹さんから「君、新聞とか出版とか受けてるって聞いたけど、将来は取材する側になりたいの?」と訊かれたんですね。

「そういうことになりますね」と答えたら、「でも取材する側より、される側になりたいって思わない?」と言われて、はっとしたんです。そうして、リクルートについて詳しく話を伺っていくうちに、リクルートの市場を創り出す力に興味がわいてきまして。ペンで社会に対して訴えるよりも、自分で新しく生活者の習慣を創ることができたらいいな、と思うようになりました。

金丸:とすると、リクルートが運命を変えた人と言えますね。

杉本:リクルートの企業研究をしていくなかで、次第にすごい会社だということがわかってきました。当時は社員数が受付嬢まで合わせると3600名。ならすと、ひとり当たりの売上が1億円以上という計算です。そして、経常利益率が30%。これは化け物のような会社だと思ったんです。

金丸:そういった思考があるのは、やはり毎日、新聞を読んでいたからでしょうね。

杉本:このほかにも、ふたつほど象徴的な出来事がありました。ひとつは大手町のビル群を見たときのこと。ふと、誰の持ち物でもないビルってないよなって思ったんですね。

一方、私の父は何十年もサラリーマンをしているけど、一軒の家を買うのが精一杯。プロレタリアートじゃないですけど、資本家と資本家じゃない人がいると感じました。それで、目白とか麻布の高級住宅街に行って、その人たちとウチの家庭を比べて、何が違うんだろうと観察してみました。会話を盗み聞きしたりして、怪しまれましたよ(笑)。でも、違いは見出せませんでした。

つまり、自分のような人間でも、資本家を目指すことは難しくないのではないか、と思ったのです。そのためにはリクルートに入って、ビジネスの作り方を学ぶのが最適だなと思いました。そしてもうひとつは、卒業旅行先のドイツで貴族の青年に出会ったことです。

金丸:アメリカでなく、ヨーロッパというのが興味深いですね。歴史は苦手だったんですよね?

杉本:そうなんですが、昔、世界を席巻していた国々を見ておきたいと思い、ペルシャやギリシャ、ローマなど5ヵ国ほどを訪れました。そして、ドイツのケルンのBARで、たまたま貴族に出会い、意気投合したのですが、世界が一変しましたね。

とにかく衝撃が大きかった。はじめは遊び慣れた若者だなあ、ぐらいにしか思っていなかったのですが、話してみたら、日本をはじめ世界情勢にすごく精通していたんです。「日本の学校は6・3・3制だよね?」とか「いまの日本の財務状況ってこうだよね?」とか「バブルは大変だったよね?」とか、とにかく知識がスゴイ。聞けば、26歳で4社の社長を兼務していて、移動はヘリコプター、大きな城に住んでいると。彼に出会ったことで、「お金に対して頭を下げることがない立場になったとき、自分だったら何に時間を遣うかな?」と考えるようになりました。

それで、就職したら闇雲にビジネスをやるのではなく、自分がお金に左右されない環境を作り出せるようになろうと決めたのです。それを達成したら、本当に生涯をかけて自分がやりたいことを見つけようと思いました。

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