「いや〜まさか偶然会うとは。ビックリだったね」
「うん、本当に。というか久しぶりだね!10年ぶりくらい?」
その翌週末。口約束だけかと思っていたが、実際にユリアは連絡をくれ、東京ミッドタウンの『アルティザン ドゥ ラ トリュフ パリ』のテラス席でランチをすることになった。
お店もユリアが決めてくれた。私は久しぶりの再会に嬉しくなる。
「結衣ちゃん、綺麗になった?学生時代はちょっと田舎っぽさというか芋っぽさというか…素朴な感じが残っていたけど、一気に垢抜けた感じがする!」
「へへ、そうかな。社会人になって、いろいろと変わったからかなぁ」
ユリアと出会ったのは、大学2年生の夏頃だった。
当時まだ地元・新潟から出てきて2年も経っていなかった私は、東京に慣れるのに必死だった。一方、ユリアの実家は、東京の足立区の方だったと記憶している。
「あの時は本当に一生懸命だったからなぁ…もうすっかり大人になったよ。それよりユリアは今、何しているの?結婚は?」
久しぶりの再会に、お互い聞きたいことが沢山あった。
「私はまだ独身で、今は広告系に勤務しているよ」
「え!そうなの?私もだよ!どこどこ?」
同じ業界という偶然が嬉しくて、私は身を乗り出した。
「結衣ちゃんも一緒なの?嬉しい♡…と言っても、私の会社は全然小さくて有名でもないところなんだけど、web系に強い広告会社なの。結衣ちゃんは?」
「私は、赤坂にある広告代理店だよ」
「え…!?すごいね、さすが結衣ちゃん。そんな大手へ行ったんだ」
「いやいや、全然凄くないよ。たまたま入れただけどいうか何というか…」
「ちなみに今、彼氏はいないの?」
正直、仕事の話よりもお互い聞きたいのはそっちの恋愛の話なのかもしれない。
再会したばかりのユリアにどう話すべきか一瞬悩んだが、私は素直に全部打ち明けた。
「…というわけなの。29歳っていう年齢もあって、結婚したいのに別れちゃったから、焦っているんだぁ」
「その彼、ひどくない?女の20代後半の価値を分かっていない!それなのに2年も引っ張るなんて。結衣ちゃんにはもっといい男がいるよ!」
「ユリアちゃん…」
なんていい子なんだろう。再会したばかりの私の気持ちを汲んで、こうして励ましてくれる。
「実はね、私も最近結婚したくて、真剣に婚活をしているの」
「そうなの?ユリアちゃんが!?意外だね」
私の記憶が正しければ、当時ユリアには年上の彼氏がおり、卒業したら結婚すると言っていた気がする。
「ねえ、結衣ちゃん。もしよかったら…私と一緒に頑張らない?」
「えっ」
その言葉に驚いて、私はユリアをまっすぐ見つめる。
「一人で行動するよりも、結衣ちゃんみたいな子と行動した方が楽しいし、結婚できる確率も上がると思うんだよね」
頼もしいオファーに、萎んでいた私の心が一気に膨らんできた。
「ね、結衣ちゃん。一緒に婚活頑張ろうよ!」
「…うん、頑張る!私、ユリアちゃんにあのタイミングで再会できたのは運命だと思う」
「そうだよ。結衣ちゃん、これは運命だよ」
いつのまにか私達は、お互いの手を取り合って笑顔で頷きあっていた。
だがこれが、全ての悪夢の始まりだったのだ。
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動き出した黒ずきんちゃん…食事会で感じた違和感とは
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この記事へのコメント
つまりフレネミーってヤツですね。
ユリアの本性が少しずつ出て来るのかな?
楽しみですね。