2020.10.02
黒ずきんちゃん Vol.1―もしあなたが、 ”善人の顔をした悪魔”と仲良くなってしまったら…?
世の中には、こんな人間がいる。
一見いい人だが、じわじわと他人を攻撃し、平気で嘘もつく。そうして気がついた時には、心をパクッと食べられている…
そう、まるで赤ずきんちゃんに出てくるオオカミのように、笑顔の裏には激しい攻撃性を隠しているのだ。
大手広告代理店に勤める結衣(29)は、ある時偶然、昔の友人・ユリア(30)と再会する。だがそれが、すべての悲劇の始まりだった。
あれは、朝からずっと雨が降り続いている日だった。
ささやかだけれども幸せで、平和な私の日常が、いつのまにかあの女によって壊されていたと気がついたのは。
「どうして...どうしてこんなことが起こるの…」
銀座の交差点で、私は呆然と立ち尽くす。
さっきまで静かに降っていた雨が、強くなっていた。雨音が強くなるにつれ、雨の粒はまるで傘に突き刺さるように、激しく打ち付ける。
「助けて…」
—カツ、カツ、カツ
ヒールの音と共に、また彼女がやってくる。
笑顔でそっと近づいてきて、平気で人の心を食らう、あのモンスターが。
◆
ー1年前ー
「え、嘘でしょ?」
「ごめん。結衣には申し訳ないんだけど、結婚する気はない」
カフェで隣に座っている若いカップルが、チラチラとこちらを見ている。
その視線も耐え難いが、私が今一番辛いのは、2年間も交際していた涼から堂々と“結婚するつもりはない”と言われたことだ。
もうすぐ、30歳。結婚をずっと夢見て、そして涼と結婚できると信じていた私にとって、それはある意味死刑宣告のようなものだった。
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