2020.07.22
ヒロインになりたくて Vol.1卒業旅行で訪れたヨーロッパでロエベのバッグや、フェラガモのパンプスなどを買い漁りブランド品で武装した。結構な出費だったが、全ては社会人デビューのため。
そんな風に夢見た社会人生活が始まったのだが…。
淳太のことを好きだと気づいたのは入社2年目のあの夜だった。
その日のうちに終わらせなければならないタスクに追われ、残業していたとき。
いつの間にか他のみんなは退社し、薄暗い会社でひとりPCと向き合っていた。
「あ~疲れた!」
思わず独り言を言って顔を上げたその時。
「…夏帆ちゃん、何してるの?」
「…え、淳太さん?どうして…」
22時過ぎ。居るはずのない、淳太が目の前に立っていた。
「さっきまでその辺で飲んでて、忘れ物に気付いたから取りに来たんだけど。まさかこんな時間まで仕事してるなんて…手伝うよ?」
「え!?いいですよ!もう遅いですし」
淳太は小さくため息をつき、夏帆の隣に腰かける。そして、夏帆の頭に大きな手のひらを乗せ、困ったように微笑んだ。
「…1人で抱えないで、いつでも相談してよ。同じチームなんだから」
その手の温かさに、思わずドキッとする。ジョーマローンの仄かな香りが、心に深く染み入った。
新人の頃から何度も淳太に救われてきた。仕事のやり方もゼロから教えてくれたし、落ち込んでいるときは飲みにも連れて行ってくれた。
彼は、社内でも圧倒的に仕事も出来て目立っていたし、誰にでも優しくて、女子の間でも人気があったから。勘違いしてはいけないと今まで自分の気持ちに気づかないフリをしてきた。
でも。
―私やっぱり、この人のこと、好きだ。
淳太への気持ちを自覚したものの、結局何も行動を起こせないまま。もともと入社当初からフリーランスでやっていたWEBマーケターの仕事が軌道にのってきたからと、彼は会社を退職してしまった。
その後、元後輩のポジションを利用して、相談があると呼び出して2人で飲みに行ったり、休日に映画に行ったこともある。
会社を辞めて経営者っぽくなっていく淳太は益々かっこよくなっていき、もっと好きになってしまった。
それなのに、いつの間にか悠乃の彼氏になっていた。
分かってる。決して悠乃が悪いわけではない。
チャンスはたくさんあったのに進展させられなかった自分が、この恋をダメにしたのだ。
◆
「夏帆、男を忘れるには新しい男を見つけるしかないよ」
あまりにも無骨な友人の物言いに、夏帆は吹き出した。
「そうだよね…。もう絶対に好きな人を誰かに取られるなんて嫌だから。脇役ポジションから卒業したい。今度こそ…」
ハンズフリーにし、夏帆はスチーマーを当てながらディープクレンジングを始めた。失恋した日でも、メイクはしっかり落としてから眠りたい。
「そうそう、結局、自己PRが上手い“あざと可愛い女”が 恋愛でも仕事でもいいところを持っていくのが世の常なんだから。もっとずる賢く生きた方がいいよ。今すぐに自分を変えることは難しいと思うから、まずは環境を新しくしてみたら?」
「と言うと?」
「新しいコミュニティで、新しい自分になって新しい男探し。…ゼロからのスタート的な?とにかく、何事も行動しなきゃ始まらないよ」
26歳にもなって、自分が変われるなんて思ってもなかった。
―でも彼女の言う通り、本当にゼロからスタートを切れるとしたら…?
狙った人を確実に落とせる、あざといくらいの女になりたい。
夏帆はスチーマーのボタンを止めて、「よし」と小さく呟いた。
「私、行動する!」
そう宣言し電話を切った夏帆は、スマホを手に取り『新しい出会い 探し方』と検索をしてみる。
「あ、これなんかいいかも…」
夏帆は未知の世界への扉を開けたことに胸の高鳴りを感じていた。
▶他にも:「私達ってどういう関係?」女の禁句に対する男のウマすぎる回答とは
▶Next:7月29日 水曜更新予定
今の自分を変えるため、夏帆が見つけた「新しい世界」とは…?
先輩が惹かれなかったってことは、つまり杏里にはあざとさとかじゃなく単純に人としての魅力が足りなかったんだと思うよ。
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