2020.07.22
ヒロインになりたくて Vol.1それは今年の1月のこと。
淳太の経営者仲間が彼女にフラれたからと、夏帆の友人も誘って新年会でもという話が持ち上がった。
元々、淳太(31)は夏帆が新卒で入社したIT企業の5コ年上の先輩だったが、2年ほど前に彼が会社を辞めて若手経営者の仲間入りをしてからは会う頻度も減っていた。だから、夏帆も久々の再会を楽しみにしていたのに。
恵比寿のイタリアンに20時集合。
遅刻魔の悠乃は案の定15分ほど遅れてやって来た。
「夏帆、駅まで迎えに来てよぉ!迷子になっちゃったぁ」
これは“方向音痴な私ってカワイイでしょ?”というアピールだ。
―そもそもこの店、駅からすぐだし…。
「ごめん、俺が迎えに行ったらよかったね」
にこやかに対応する淳太だが、彼は悠乃のようにキャピキャピした女の子が苦手だということを夏帆はよく知っていた。
だからこそ、今日は敢えて悠乃を呼んだのに。
「淳太さん、グラス空いてますよ。何飲みます?」
空のグラスを指さし、小首を傾げる悠乃。長い睫毛に縁どられた大きな瞳が、真っ直ぐに淳太を捕えている。彼女は淳太を狙っているようだ。
確かに、彼は経営者でそれなりに稼ぎもある。見た目も、スッとした目鼻立ちに黒縁眼鏡がよく似合っており、全体的にスマートな印象だ。
でも、悠乃のタイプは、芸能人級のイケメンとか、年収5,000万以上でタワマンの最上階に住んでるような人。淳太レベルの男には興味ないはず…。
そう自分に言い聞かせ、あくまで淳太の友人に勧めるつもりで悠乃をひたすら褒めちぎっていた。
それが結果として淳太へのアピールにもなっていたなんて。
「うー。私って、本当にバカ…」
夏帆は、髪をかき上げながら深くため息をついた。
「夏帆って、言葉は悪いんだけどさ、なんていうか…引き立て役、だよね」
引き立て役―。
その言葉は、夏帆の心にグサリと突き刺さる。
「引き立て役、か…」
思い返せば、昔から自分はそうだった。
最初は皆と一緒に楽しく話していたはずなのに、気がつくと、あざとい女たちにその場を完全に持っていかれ1人取り残されたような気持ちになる。
モテなくはないし、彼氏もそれなりにいる。でも、私が憧れるポジションは、いつも他の女に華麗に奪われてしまう。
◆
ー2013年4月ー
夏帆は、第一志望だった上智大学に入学。
憧れていた華やかなキャンパスライフを送るため、学内でも目立っていたダンスサークルに入った。
持ち前の明るさと、華やかな見た目のお陰で女の先輩達から気に入られた夏帆は、経営者や芸能人が集うパーティーなどにも誘われるようになった。夢のようにキラキラした毎日を謳歌する一方で、グループ内における自分のポジションに疑問を感じるようになる。
ーあれ、なんかおかしい。私それなりにモテるはずなのに…。
どこに行ったってそれなりに可愛いと言われるのに、結局パーティーなんかで注目が集まって最後にいい思いをするのは、悠乃のような“あざと可愛いちゃっかり女”だ。
表面的にはみんなと上手くやっていたが、ポジション争いを常にしていたような学生時代だった。
そんな大学時代を過ごしていたが、人気IT企業に就職が決まった時は飛び上がるほど嬉しかった。
学生時代に本領発揮できなかった分、社会人デビューして巻き返そうと企てる。
仕事はもちろん頑張るつもりだったが、新たな出会いにも期待を膨らませていた。
先輩が惹かれなかったってことは、つまり杏里にはあざとさとかじゃなく単純に人としての魅力が足りなかったんだと思うよ。
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