聖女の仮面 Vol.2

「どうせ、整形したんでしょ…?」10年ぶりに会う友人の変貌ぶりに、嫉妬をむき出しにした女

女は、仮面を被った生き物だ。

優しい微笑みの裏に、怒りや悲しみ、ときに秘密を隠し、本当の自分を偽りながら暮らしていく。

たとえば聖女のような女にだって、裏があるかもしれない。

それを美しい仮面で覆い隠しながら、生きているのだ。

恵子が高校生の頃、聖陽女学院で、ある一人の女生徒が、理由もわからず突然転校していった。

あれから10年。27歳となった恵子たちの前に、あの時いなくなった女が現れてー。

4人の女が美しい仮面の下に隠す、素顔と真実とは?


高校2年の春に突然失踪した親友・絹香から突然届いたメッセージをきっかけに、恵子・萌・さくらの3人は、10年ぶりの再会を果たした。

しかし、そこに現れた絹香は、昔とは全く違う絶世の美女に変貌を遂げていて…?


ー本当に絹香なの…?面影はあるけれど、とても信じられない…。

恵子は、目の前で微笑む美女を見つめながら、昔の記憶を必死に手繰り寄せていた。

確かに昔から目鼻立ちははっきりしていたような気はするし、肌はキメ細かく美しかったはず。

けれど、ぽっちゃりとした体形や、笑うたびに覗く八重歯、本人も気にしていた天然パーマの印象が強すぎて、どうしても今目の前にいる人物と、あの頃の絹香が一致しないのだ。

それは、約束の時間から大幅に遅れて現れた萌も同じらしく、遅刻の言い訳もそこそこに、驚きの声を上げ続けている。

「びっくりなんだけど!本当に絹香なのぉ?!てか、すっごい痩せたよね?!道ですれ違っても絶対に気付かない自信あるもん!」

別人みたいだよね?と、萌は、二人に同意を求めた。さくらは軽く首を傾げ、恵子は苦笑いを返しただけだったが、どうやら萌はそれを同意と取ったらしい。

「向こうの食事が体に合わなくて、気付いたら痩せてたの。…それにしても、萌は昔と全然変わらないわね。こんなかわいいママ、あんまりいないわよ。」

萌の少々失礼な発言に動じることなく、絹香は微笑んだ。美女から褒められたことに気を良くしたのか、萌は満面の笑みで運ばれてきたばかりのアイスティーに手を伸ばす。

「絹香さ、急に家族でアメリカに行くことになって、それからずっとニューヨークで暮らしてたんだって。」

先ほど絹香から聞いた話を、さくらが萌に説明する。

「えー!そうだったんだ。でも、連絡ぐらいしてくれてもよかったのに。私たちすっごい心配して、家まで様子見にいったんだよ。」

萌の追求に、絹香は心底申し訳なさそうに肩をすくめる。そして、三人の顔を順番に見つめながらつぶやいた。

「何も言わずに消えてしまって、ごめんなさい。父の都合で、本当に急に決まってしまったの。他にも色々事情が重なって…連絡しないまま、ずるずると10年も経っちゃった。」

恵子の記憶が正しければ、絹香の父親は普通のサラリーマンだったはず。勤め人の宿命なのかもしれないが、親友に連絡が出来ないほど急な辞令などあるのだろうか。

経営者一家で育った恵子には、その辺の感覚はわからない。それは、両親ともに弁護士のさくらや、医師の娘である萌も、きっと同じだろう。

「でも、こうして今日みんなに再会できて嬉しいわ!これからまた、昔みたいに仲よくできると思うと、もう夢みたい!」

弾けるような笑顔を浮かべる絹香に、過去の事情を根掘り葉掘り聞くのも気が引けて、恵子も精一杯の笑顔で応えた。

【聖女の仮面】の記事一覧

もどる
すすむ

おすすめ記事

もどる
すすむ

東京カレンダーショッピング

もどる
すすむ

ロングヒット記事

もどる
すすむ
Appstore logo Googleplay logo