聖女の仮面 Vol.6

「あなたのパパ、父の会社の従業員だったの?」10年来の友情を経て発覚した、女のヒエラルキー

女は、仮面を被った生き物だ。

優しい微笑みの裏に、怒りや悲しみ、ときに秘密を隠し、本当の自分を偽りながら暮らしていく。

たとえば聖女のような女にだって、裏があるかもしれない。

それを美しい仮面で覆い隠しながら、生きているのだ。


◆これまでのあらすじ

恵子が高校生の頃、聖陽女学院で、ある一人の女生徒が、理由もわからず突然転校していった。

あれから10年。27歳となった恵子たちの前に、美しく姿を変えて現れた絹香

恵子は、絹香を学校から追い出した犯人捜しをかってでた。絹香と、婚約者・手嶋の邪魔をしようとするをなんとか止めるが、絹香から過去の秘密を打ち明けられて…?


“高1の冬、家出した萌の居場所をご両親に教えたのは、私とさくらなの。”

萌の浮気騒動から一夜明け、恵子は絹香の言葉を思い出していた。

萌の父は、今でも都内で開業医をしている。恵子も会ったことがあるが、教育熱心で厳しい人だった。

それに、聖陽女学院の卒業生でもある萌の母は、大変な心配性で、日が暮れると数分ごとに萌の携帯を鳴らす「萌ママコール」でよく知られていた。

恵子の両親も厳しかったので、過保護な親にうんざりする萌の気持ちをよく理解できた。

どちらかと言えば放任主義だった絹香やさくらの親と比較しては、二人で親の愚痴をいったものだ。

―それなのに、家出の事なんて私には一言も…。

またも判明した自分だけが知らない事実に、恵子の胸にドロッとした感情が拡がる。

なぜ自分だけがこうも蚊帳の外なのか、高校1年だった10年前の冬を思い返してみるものの、何故か記憶が曖昧で思い出せない。

真実を知りたい。その一心で恵子は、さくらに連絡したのだった。



恵子に会うや否や、ゴシップ好きのさくらは、騒動の一部始終を聞きたがった。

さくらの勤務先近くにある『サロカフェ』は賑わっていて、込み入った話をするのには最適だ。

恵子の説明に、さくらは満足そうだ。一通り聞き終わると、萌の近況を饒舌に話し始めた。

「萌、旦那と別居してるみたい。インスタから旦那の影が消えたから予感はしてたけどね。あの日、萌の家で、萌ママがレナちゃんと留守番してたんだって。萌がいつまで経っても帰ってこないから、別居中の旦那に連絡したらしいよ。

…レナちゃんもまだ小さいのに、大変だね。てかさ、ホントに手嶋君と1年前何もなかったのかな?彼はどんな感じだったの?」

離婚の話も出てるみたい、と、さくらは悪だくみするように、ニヤッと笑った。

そういえば、こんな表情を浮かべる彼女を、前にも一度見た気がするが、いつの事かは思い出せない。

昼休みは残り少ししかない。恵子は記憶をたどるよりも先に、気になっている本題を切り出すことにした。

「ねえ、さくら。昔、絹香と二人で、萌の家出を阻止したことがあるって、本当?絹香が、そのことで萌が自分を恨んでるかもしれないって言ってたのよ。」

「あー…」

つい先ほどまで身を乗り出していたさくらが、明らかに気まずそうに、目を伏せた。

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