2019.08.22
聖女の仮面 Vol.1女は、仮面を被った生き物だ。
優しい微笑みの裏に、怒りや悲しみ、ときに秘密を隠し、本当の自分を偽りながら暮らしていく。
たとえば聖女のような女にだって、裏があるかもしれない。
それを美しい仮面で覆い隠しながら、生きているのだ。
恵子が高校生の頃、聖陽女学院で、ある一人の女生徒が、理由もわからず突然転校していった。
あれから10年。27歳となった恵子たちの前に、あの時いなくなった女が現れてー。
4人の女が美しい仮面の下に隠す、素顔と真実とは?
「二人とも、写真撮るからこっちきてー!」
甲高い声に、恵子は振り返った。うだるような炎天下のベランダで、声の主・萌が大きく手招きしている。
急いで立ち上がると、毛玉のようなトイプードルが足にまとわりついてくる。万が一にも蹴ってしまうようなことが無いように注意しながら、外にでた。
「こんな暑いのに萌もよくやるよ。インスタってそんなに面白いのかな。ねえ?」
後ろから聞こえる、さくらのつぶやきを、恵子はいつもどおり苦笑とともにやりすごす。こんなやりとりももう、慣れたものだ。
恵子と萌、そしてさくらは、聖陽女学院の同級生だ。
都内でも有数のお嬢様学校で出会った3人は、タイプも性格もまるで違うのに、なんだかんだでもう10年以上、行動を共にしている。
同級生が社会人デビューを果たす中、萌は早々に結婚して家庭に入り、現在は子供もいる。それ以降、3人で会うときは、都内のはずれにある萌自慢の一軒家で集まるようになった。
最近は、ここに来るたびに、インスタグラムに夢中な萌のカメラに収まるのが恒例となっている。
こだわりを詰め込んだという狭いベランダには、ヨーロッパ風のテーブルセットが置いてあるせいで、大人3人も集まれば、外なのに息が詰まる。
「よし、設置オッケー!二人、ここに立って。」
恵子は萌の左側に立つと、息苦しさと蒸し暑さに耐えながら、連射音を立てるカメラに笑顔を向けたのだった。
同級生というのは不思議なものだと、恵子はしみじみと思う。
「友情」という言葉だけでは表せないような、強固な絆で結ばれた関係。それゆえに、一度形成されたヒエラルキーは、絶対に覆らない。
【聖女の仮面】の記事一覧
2019.12.29
Vol.14
2019年ヒット小説総集編:「聖女の仮面」
2019.11.07
Vol.13
「男もお金も、美しい顔も手に入れたのに…」10年かけて立場逆転した27歳女が、不幸な理由とは
2019.11.06
Vol.12
10年前にいなくなった女友達が、再び姿を現した本当の目的は?「聖女の仮面」全話総集編
2019.10.31
Vol.11
同級生の女からの無茶な依頼に、言いなりに…。知らぬ間に復讐の片棒を担がされていた女
2019.10.24
Vol.10
「見かけは大人しそうな子が、影で凄いことしてたって」男が漏らした一言で、友人の本性を知った女
2019.10.17
Vol.9
男性と写った1枚の写真がキッカケで、追い込まれた女。彼女が、友人に頼んだこととは
2019.10.10
Vol.8
「自分の顔が、嫌いだったの」。友人が、10年前とは別人のように美女となった本当の理由
2019.10.03
Vol.7
「私、偶然見ちゃった・・・」。ほんの出来心から犯した罪を、友人に目撃された女
2019.09.26
Vol.6
「あなたのパパ、父の会社の従業員だったの?」10年来の友情を経て発覚した、女のヒエラルキー
2019.09.19
Vol.5
「運命の再会を果たしたの…」夜10時。夫と子どもが待つ家には帰らず、妻が居た場所とは
2019.09.12
Vol.4
「彼、一度や二度じゃないの…」。女友達に、恋人の手癖の悪さを忠告しようとした既婚女
2019.09.05
Vol.3
「純潔ではない」というレッテルを貼られ…。過去に嵌められた美女が、友人の前に再び現れた理由
2019.08.29
Vol.2
「どうせ、整形したんでしょ…?」10年ぶりに会う友人の変貌ぶりに、嫉妬をむき出しにした女
おすすめ記事
2022.12.30
プレゼントを開けたら
独身仲間だった親友に、先を越された夜。結婚報告を受けた女が自覚した、誰にも言えない想い
2020.09.04
男子校男子
待ち合わせは六本木アマンド前。初デート開始5分で、女が「2回目はない!」と見限ったワケ
2021.08.31
アイ・ニード・モア〜外資系オンナの欲望〜
「時短で楽してるくせに」ワーママを目の敵にするキャリア重視の女が、不本意な業務を割り振られ…
2017.01.20
部屋見るオンナ
部屋見るオンナ:イケメン不動産屋に「小物ブランドの統一感のなさ」で優柔不断と罵られる
- PR
2023.05.26
結婚を意識する3年目のふたりの、艶やかな6月の過ごし方
- PR
2023.05.24
女性から支持されるブランドのメンズバッグこそ、艶やかなディナーの頼もしき相棒だ!
2016.11.26
軽井沢の冬
軽井沢の冬:1%の可能性が妻のプライド…真実がいつも正しいわけじゃない。
2017.03.06
上京10年目
上京10年目:28歳。東京にいる意味が見いだせなくなった時、思い出すのはあの景色
2018.03.09
サイコパスな夫
サイコパスな夫:“顔面偏差値至上主義男”との出会いを企てた、女友達の恐ろし過ぎる陰謀
2017.04.11
港区内格差
港区内格差:“港区特権階級”に属す一握りの男。そこに群がる女たちと、うごめく欲望
東京カレンダーショッピング
ロングヒット記事
2023.04.26
【ご報告】
ヒモ同然だった元カレが、司法試験に合格。生まれ変わった彼から差し出された、封筒の中身は…
2023.05.05
甘いひとくち〜凛子のスイーツ探訪記〜
「ちょっと休んでくるね…」休日デートの途中、31歳女が涙をこらえて彼氏から逃げたワケ
2023.04.23
男と女の答えあわせ【A】
女性の家で目を覚ました瞬間に、慌てて帰った男。部屋でうっかり見えてしまったモノに驚愕し…
2023.05.14
ハワイに憧れて
離婚して10年経っても、元妻に会い続ける男。不審に思った現妻が、夫を問いただすと…
2023.04.22
男と女の答えあわせ【Q】
3度目のデートでキス。「付き合おう」と言って家まで来たのに、翌朝に男が慌てて帰った理由
2023.04.28
スモールワールド~上流階級の社会~
「花嫁は彼のこと、好きじゃなさそう」結婚式に出席した無邪気な女子が、そう思った理由とは…
2023.05.09
二世お受験物語
名門校卒だと知られた途端、教室のママ友たちの「見る目」が変わり…。“二世受験”の苦悩
2023.05.16
AM9時、六本木のカフェで
カフェで堂々と別れ話をするカップルに遭遇。思わず聞き耳を立てた女が、恥ずかしさに頬を赤らめたワケ
2023.04.27
許さない女、許す男
離婚から1年。男が初めて別れを後悔した、元妻からのLINEの中身とは?
2023.05.04
嘘
嘘:計画通り“医者”を捕まえた32歳女。しかし婚約直後、知りたくなかった彼の本性に触れ…
この記事へのコメント