女たちの選択~その後の人生~ Vol.4

会社役員まで登りつめた35歳のキャリア女性が、”敢えて”認可保育園を辞退した理由

キャリアを積み、ロールモデルとなった女への重圧


「妊娠するまでは、私はいわゆる“バリキャリ”だったと思います。1日中働いて、午前様に帰宅する日も週に何度もありました」

麻里は新卒で大手広告代理店に入社し、その後知人が設立した人材系のベンチャー企業に転職した。

もともと営業で活躍していた彼女だが、その後はさらにスキルを発揮し、短期間で役員という地位に登りつめたという。

「別に、私が特に優秀ってわけでもないんです。社員数も多くないし女性も少ないので、仕事に没頭するうちに“ロールモデル”のようになって、役職を与えられただけで...」

麻里は肩をすくめるが、その話し方や所作から彼女の優秀さはよく伝わる。

「でも...私はもともと結婚願望も強く、子どもも欲しかったんです。なのに仕事が忙しく生活は不規則で、外食も多く不摂生な日々を送っていたからでしょうね。子どもを授からないまま、気づけば結婚して5年以上も経っていました」

ちなみに麻里は、20代後半で代理店時代の先輩と結婚したそうだ。

多忙な日々の中で子どもを持ちたいという願望は常にあったそうだが、体温を測り排卵日を狙う...という“妊活”はなかなか難しく、病院にも通った。

「私は幸運にも、大きな治療をすることなく、病院に通い始めて間もなく妊娠できました。会社に報告したときには“おめでとう!ママになっても頑張って”と、サプライズでケーキまで用意してお祝いしてもらいました」

麻里は重要な仕事をいくつも抱えていたが、会社は懐妊を快く受け入れてくれたという。

むしろ、彼女のような立場の女性が妊娠・出産後も変わらず同じ仕事ができる職場が理想だとすら言ってくれた。

「そんな風に言ってもらえるのは、すごく有難いことですよね。私も仕事が続けられるのは嬉しかった。でも妊娠が進むうち、仕事がキツくなっていったのも事実で...」

麻里自身、幸い妊娠当初は悪阻がほとんどなかったこともあり、子育てと仕事を両立している未来の自分を想像しては意気込んでいた。

しかし、一般的には安定期と言われる妊娠中期に入った途端、度重なる貧血に悩まされるようになったのだ。

「動悸、息切れから始まって、急に目の前が真っ暗になることがよくありました。その度にお腹の子に何か起きたのかとビクビクして...。体調不良と通院で会社を休むことも多くなり、だんだん自分に自信が無くなってきて...」

だが、もともと責任感の強い麻里は、それでも何とか産休ギリギリまで仕事をやりきった。通勤ができないときは家でリモートワークをしたり、キツいながらも職務を全うしたのだ。

「無事に出産したときは、やっと不安から解消されました。何より私みたいな母親のお腹の中で健康に育って産まれてくれた娘が愛しくて仕方なかった。でも...。

生後3ヶ月も経たないうちに、会社に戻ってきて欲しいって言われたんです」

【女たちの選択~その後の人生~】の記事一覧

もどる
すすむ

おすすめ記事

もどる
すすむ

東京カレンダーショッピング

もどる
すすむ

ロングヒット記事

もどる
すすむ
Appstore logo Googleplay logo