2018.11.24
マザー・ウォーズ~妻たちの階級闘争~ Vol.11あなたが港区界隈に住んでいるならば、きっと目にしたことがあるだろう。
透き通るような肌、絶妙にまとめられた巻き髪。エレガントな紺ワンピースに、華奢なハイヒール。
そんな装いの女たちが、まるで聖母のように微笑んで、幼稚園児の手を引く姿を。
これは特権階級が集う秘められた世界、「港区私立名門幼稚園」を舞台にした、女たちの闘いの物語である。
「マザー・ウォーズ~妻たちの階級闘争~」一挙に全話おさらい!
第1話:
マザー・ウォーズ〜妻たちの階級闘争〜:港区名門幼稚園に集う、特権階級の女たちと「鉄の掟」
目の前のメルセデスから、白い手袋をした運転手に促され、親子が降りてくる。
その後ろには、母親が運転するさまざまな高級車が行儀よく並び、順に子どもを降ろしていた。
その光景は、昨日の入園式で嫌というほど目にしていたので、もう驚きはしない。それより悠理に衝撃を与えたのは、入園式でもなんでもない今日の、母親たちの装いだ。
―どこをどう見ても、子どもを幼稚園に送る格好じゃないよね…。
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第2話:
入会金350万の会員制クラブに出入りする、特権階級の女たち。平凡妻は知らない「7つのお約束」
「ご存知の通り、私は上の娘が年長に在籍しております。今日は、少しばかり先輩として、この園における『鉄の不文律』を皆様にお伝えしておこうと思います」
―鉄!?
悠理はその不穏な響きに驚いて綾子の顔を見た。
綾子の言葉に、全員がバッグから手帳を取り出す。まるで今日はそのために集まったと言わんばかりではないか。
―な、なにが始まるの…?
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第3話:
「IT長者なんて所詮、成金」。港区妻カーストの頂点は誰?財力だけでは勝てぬ、格付けし合う女たち
「序列なんてあるんですか?」
悠理の言葉に、葵はこれまでの上品で愛想のいいセレブ妻「神崎葵」の仮面を外し、忌々しそうに言った。
「成り上がりはここにはふさわしくないって、元麻布や高輪の名門一家の奥様からは見えないモノとして扱われてる。白金台の聖心OGマダムたちもいくら話しかけてもよそよそしいし。私が高卒で香川出身の田舎者だってみんな知ってるから」
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第4話:
女のマウンティング祭りで、餌食となった元キャリア妻。女たちの怒りに火をつけた、思わぬ失言とは
「それでは、麻布、白金、芝浦、高輪の4つのグループに分かれて準備を行いたいと思います」
例年のやり方に倣ってグループ分けの方法を提案すると、皆すでに心得ている様子で頷いた。
すると、この特殊な幼稚園においても、常に手入れの行き届いた身なりと統一美で他を圧倒する白金台サロネーゼ軍団が、まずは立ち上がった。
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第5話:
週刊誌のカメラマンに狙われた、政界プリンス妻の疑惑。怪しい視線の先にいた、男の正体とは
門扉までくると、悠理は足を止めた。
―?マスコミ…?
カメラを構えたマスコミの記者数名が、周辺の様子を伺っているのだ。
「ごきげんよう、悠理さん。こんなところでもたもたしてると、とばっちりに合いますよ」
送迎の車を降りてきた東郷綾子が、さっと悠理の腕をとると、門の中に促す。
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第6話:
金に糸目をつけぬ、ママ友たち。3歳でも"一流"にこだわる母たちによる、驚愕の計画とは
悠理は強い日差しを掌で遮って、空を見た。午後の芝浦チームのフラダンスステージにふさわしい、さわやかな晴れ間だ。
フェスティバルが無事に終われば、もうすぐ、夏休み。
悠理の胸には、予想だにしなかった達成感と爽快感が沸き上がっていく。
―この名門幼稚園の夏休みがどんなものなのかを、悠理はまだ知る由もなく。
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第7話:
「おねがい、誰にも言わないで」プライド高きボス妻が弱みを見せた瞬間。彼女が涙を流した理由とは
運転席に座る男は、遠目にも小顔で整っており、見覚えのある日本人だった。そして今まさに助手席から飛び出そうとしている女は…まさか。
「あ、綾子さん?…と、遠峯…涼真!?」
思わず漏れた声がこちらに走ってきた東郷綾子の耳にとどいたのか、視線がぶつかる。綾子の顔は、涙で濡れていた。
「ゆ、悠理さん…!」
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第8話:
「まさかあの人が、あなたの夫?」格下妻が、一夜で女たちの嫉妬羨望の的となった理由
母親たちのバックグランドは、この名門幼稚園においても、みんな違う。裕福な男と結婚した、ということ以外には。
そして誰もが綾子のように、出自に恵まれているわけではない。「そうでない者」ほど、より一層エレガントに武装する。
それからもう一つ。皆、母親らしくなるために、必死なのだ。分身である子どものために。たとえそれが時に空回りだとしても。
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第9話:
ママ友に馴染めない…。妻たちの特殊な世界で、"夫の素性"を隠し続けた女が受けた報復
「有名人のご家庭は、普通と感覚が違うと聞きますし、女性関係のごたごたもよくあることなのかもしれませんが…これ以上園や私どもに迷惑をかけるようなことがあれば、こちらもしかるべき対応を考えさせていただきますわ」
藤堂麗子が、皆の総意だというように断じると、周囲の母親たちもこちらを見ながらうなずいている。
「…はい。大変申し訳ありませんでした」
悠理は、靴のつま先をじっと見ながら、もう一度頭を下げた。
第9話の続きはこちら
第10話:
「あなたはもう、庶民じゃないでしょ?」結婚してセレブ妻の仲間入りした女の心をエグる、ママ友の一言
「どうして悠理さんが謝るの?ワルイのは写真撮られたご主人でしょ。思ってもないのに謝るの、体に悪いわよ」
どう体に悪いのか、イマイチわからなかったが、美紀の言葉は温かく響いた。
「ありがとうございます…。私みたいな庶民を追いかけまわして、何が面白いんでしょうか」
思わず気が緩んだ悠理が漏らした言葉は、思いがけず美紀に冷たく遮られた。
第10話の続きはこちら
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