マザー・ウォーズ~妻たちの階級闘争~ Vol.8

「まさかあの人が、あなたの夫?」格下妻が、一夜で女たちの嫉妬羨望の的となった理由

あなたが港区界隈に住んでいるならば、きっと目にしたことがあるだろう。

透き通るような肌、絶妙にまとめられた巻き髪。エレガントな紺ワンピースに、華奢なハイヒール。

まるで聖母のように微笑んで、幼稚園児の手を引く女たちを。

これは特権階級が集う「港区私立名門幼稚園」を舞台にした、女たちの闘いの物語である。


麻布十番在住の菱木悠理は、作家の夫・邦彦の願いで娘の理子を名門幼稚園に入れることになった。

痛烈な嫌味を受けて、高輪妻に啖呵を切ってしまい、母親たちの中で孤立していた悠理だったが、妻たちから夏休みのハワイ集合に誘われる

ハワイで偶然にも悠理が目にしてしまったのは、政界名門妻・東郷綾子と、芝浦妻リサの夫・遠峯涼真の密会現場であった。


「綾子さん。目、覚ましてください。それ、ただの不倫です」

悠理は、初めて綾子に対して友人として言葉を紡いだ。

ハワイのカフェには全く似つかわしくないセリフは、ひどく場違いで、それだけに威力がある。

「ふ、不倫だなんて、悠理さん、口を謹んで!私たちは何も…!」

ママ友の夫でもある有名プロデューサー・遠峯涼真との密会を目撃され、打ちひしがれていた綾子だったが、悠理の「不倫」という言葉に怯えたような目を向ける。

悠理は、そんな綾子を見て、心を決めて言葉をかけた。

「綾子さん、昔の男に縋っても、"自分の問題"は何も解決しないんです」

そう言いながら悠理は、今朝、ブランチ会で聞いたある話を思い出していた。

幼稚園の母親たちが「綾子さんは名門政治家の嫁として、男子を絶対に産まなきゃならないのにお子さんは姉妹。いよいよプレッシャーよね」と囁きあっていたのだ。

そして、入園してから毎日同じ麻布グループとして濃密に一緒に過ごした悠理は、じつは綾子のいくつかの「兆候」に気づいていた。

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