マザー・ウォーズ~妻たちの階級闘争~ Vol.4

女のマウンティング祭りで、餌食となった元キャリア妻。女たちの怒りに火をつけた、思わぬ失言とは

あなたが港区界隈に住んでいるならば、きっと目にしたことがあるだろう。

透き通るような肌、絶妙にまとめられた巻き髪。エレガントな紺ワンピースに、華奢なハイヒール。

そんな装いの女たちが、まるで聖母のように微笑んで、幼稚園児の手を引く姿を。

これは特権階級が集う秘められた世界、「港区私立名門幼稚園」を舞台にした、女たちの闘いの物語である。

麻布十番在住の菱木悠理は、作家の夫・邦彦のたっての願いで、仕事を辞め、娘の理子を名門幼稚園に入れることになった。

初回ママランチは会員制の東京アメリカンクラブで催され、役員を引き受けるよう仕向けられた悠理。初仕事の運動会では、衝撃の光景が繰り広げられ、改めて場違いぶりを痛感する。

そして次のイベント、「フェスティバル」がやってくる―。


「それでは…フェスティバルについて説明します」

母親が集合する定期クラス会で、悠理はホワイトボードの前に立ち、連絡事項を読み上げる。

「フェスティバルでは、準備がしやすいようにお住まいが近い方とグループを作っていただいています。そのあと、各グループが何を担当するか決定したいと思います」

母親たちは悠理の話を聞いて、そこここで目くばせをしている。フェスティバルでも幹事を担うのは役員のため、悠理を含む役員数名が今日の進行も担当するのだ。

幼稚園の「鉄の掟」通り、クラス会に下の子を連れてくる人もいなければ、欠席するひともいない。おまけにいつもよりも秘めたる熱気を感じるのは、大イベントならではか。

「それでは、麻布、白金、芝浦、高輪の4つのグループに分かれて準備を行いたいと思います」

例年のやり方に倣ってグループ分けの方法を提案すると、皆すでに心得ている様子で頷いた。

すると、この特殊な幼稚園においても、常に手入れの行き届いた身なりと統一美で他を圧倒する白金台サロネーゼ軍団が、まずは立ち上がった。

「白金台メンバーは、全員がサロンを開いてるので、そのスキルや材料を活かして子どもが楽しめるワークショップを考えております。

ハーバリウムやジェルキャンドル、バッグチャームであれば安全に楽しく作れるかと。茶道体験も考えております」

妻偏差値というのがあるとすれば、彼女たちのそれは70を超えるのかもしれない。圧倒的に裕福でエレガントな妻そのもののいで立ちでほほ笑み、あたりを見回す。

悠理は「ありがとうございます」と言いながら、ホワイトボードにメンバーの名前を書きとめた。

そしてそこからは、まるで対抗するかのように、次々と手があがっていく。

【マザー・ウォーズ~妻たちの階級闘争~】の記事一覧

もどる
すすむ

おすすめ記事

もどる
すすむ

東京カレンダーショッピング

もどる
すすむ

ロングヒット記事

もどる
すすむ
Appstore logo Googleplay logo