京都ちゃん Vol.9

東京の夜は、罪悪感を消す。好意を寄せる男と再会した京おんなの、意外な決心

生粋の京おんな・鶴田凛子(26歳)は、西陣で呉服店を営む京野家の跡取り息子・京野拓真と婚約中だ。

義母の過干渉に苦しむ凛子に、昔ささやかな恋心を抱いていた竜太から食事の誘いが。

拓真に嘘をつき密会した凛子は、竜太の言葉に心が揺れてしまう。

義母の横暴はますますエスカレート。だが婚約者・拓真は事なかれ主義で我慢の限界に。

婚約破棄を考え始めた凛子はついに感情をぶつけるが、拓真は意外にも男らしく受け止める。

拓真の優しさに触れた凛子はもう一度踏みとどまってみようと心に誓うものの、桜子に誘われ東京に繰り出す。


誰も、私を知らない


瑞々しさが残る新緑に眩い光が反射し、凛子は思わず目を細めた。

視線の先で青山の街を歩く桜子は、もうすっかり慣れた足取り。その背中は、以前とは別人のように頼もしく見えた。

桜子に誘われ、凛子は今、東京に来ている。

つい先ほど彼女の東京での自宅・北青山のマンションに荷物を置かせてもらい、ディナーの時間までカフェで一息つこうという話になった。

マダムたちが優雅に歩く北青山を抜けて骨董通りに出ると、平日だというのにひっきりなしに人とすれ違う。

細身のデニムで闊歩するおしゃれな女の子、ショッパーをいくつも抱えたモデル風の美女。

しかしここにいる人は誰ひとり、凛子のことを知らない。

凛子がいつも以上にはしゃいでいても、何をしていても、誰にとやかく言われることもない。

その気軽さに、凛子は病みつきになりそうな心地よさを感じた。

「竜太くんの仕事が終わるのちょっと遅くて…ディナーの予約は20時からやねん。ちょっと時間あるし、ケーキでも食べちゃおっか」

到着した『LADUREE 青山店』の入り口で、桜子が凛子に笑いかけた。

「わ、ここ来てみたかった!」

『LADUREE 青山店』のサロン・ド・テは、最近インスタグラムでよく目にしており気になっていた。

美味しいお菓子なら、京都にだって山ほどある。

しかしいつの時代も話題の中心にあるのは、やはり東京なのだ。

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