新婚クライシス Vol.9

新婚クライシス:そもそも、彼には“妻”の存在など必要なかった。ハイスぺ夫に尽くし続けた女の限界

―大好きな吾郎くんが、私と結婚してくれたー

数々の苦難の末に、結婚願望のない男・吾郎との結婚に辿りついた英里。

結婚はゴールでないことなど、百も承知。

しかし、そんな二人を待ち受けていたのは、予想を上回る過酷な現実であった。

愛し合っていたはずの夫婦は、どのようにすれ違い、溝ができてしまったのか。

男女の価値観のズレ、見解の相違、そして、家庭外での誘惑...。

二人は “新婚クライシス”を迎え夫婦のすれ違いは深まる。そんな中、英里は元彼・きんちゃんとの偶然の再会に触発され、ついに「子どもが欲しい」と吾郎に宣言する。しかし夫婦仲はギクシャクしたまま、英里は後輩・新一に心を開き始める。


―ふざけるなよ...。

吾郎は高速のランニングマシーンと格闘するように汗を流しながら、英里への苛立ちを募らせていた。

結婚式だの子作りだの、自分に超無理難題を押し付けておきながら、目を潤ませ頬を紅潮させ、フラついた足元で深夜に帰宅した妻。それも、この直近で2回目である。


会社の友だちと飲んでいたというが、きっと先日のように男も同席していたに違いない。

だとすれば、もともと酒に弱い英里がそれほど無防備に酔ったという事実にも怒りが募る。しかも彼女に反省の色は見られず、あの晩以降、夫婦関係はさらに悪化の一途を辿っているのだ。

自覚はないが嫉妬深い吾郎にとって、それは自分への愚弄行為に等しかった。

―もう、絶対に俺から歩み寄ることはないぞ...。

吾郎は自分を奮い立たせるように、BOSEのワイヤレスイヤホンから流れるハードロックのボリュームを一気に上げる。

英里の方からきちんと謝罪を申し出るまで、決して心は許すまい。

だが、プライドを傷つけられ、嫉妬を煽られ、単純に“拗ねて”石のように頑固化した吾郎は、英里から見れば、ただただ氷のように冷酷な男であることに、本人は気づいてはいなかった。

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