新婚クライシス Vol.3

新婚クライシス:“自分至上主義”の夫と冷戦状態の週末。心弱った新妻を癒した、ある男からの一言

―大好きな吾郎くんが、私と結婚してくれたー

数々の苦難の末に、結婚願望のない男・吾郎との結婚に辿りついた英里。

結婚はゴールでないことなど、百も承知。

しかし、そんな二人を待ち受けていたのは、予想を上回る過酷な現実であった。

愛し合っていたはずの夫婦は、どのようにすれ違い、溝ができてしまったのか。

男女の価値観のズレ、見解の相違、そして、家庭外での誘惑...。

二人はとうとう、 “新婚クライシス”を迎えた


「何も変わってないのは、吾郎くんの方でしょう!!!」

グラスが割れる音が深夜の薄暗いリビングに虚しく響いたとき、英里は自分が思わず声を荒げたのに気づきハッとした。

とうとう、やってしまった。

なるべく穏便に平和な結婚生活を過ごそうと、これまで散々気をつけてきたのに。吾郎と入籍を果たしたときに感じた、あの天にも昇るような幸福感を一生忘れないと自分に固く誓ったのに。

「......」

おそるおそる夫の方を振り返ると、吾郎は無言のまま、嫌味っぽく溜息をついていた。ダメだと分かっていても、そんな吾郎の態度は英里の神経をさらに逆撫でする。

「...だって私たち、全然夫婦らしくないじゃない...!」

一度爆発した感情はすでに収まる場所を失い、抑えることができなかった。

「結婚式もハネムーンもない、新居探しもない...。吾郎くんは結婚指輪もしないで、私のことなんてお構いなしに一人で好き勝手楽しんでるわ。

やっぱり、私のことなんてどうでもいいんでしょ?私が居てもいなくても、吾郎くんの生活は何も変わらないんだから!!」

感情に任せてそこまで言ってしまったが、吾郎は変わらず英里を蔑むような表情を浮かべたまま、こちらを振り向きもしない。

「......下らない。俺はもう寝る」

そうして夫は、静かにリビングを出て行ってしまった。

そしてその夜、二人は結婚後初めて、背を向け合ってベッドに入った。

【新婚クライシス】の記事一覧

もどる
すすむ

おすすめ記事

もどる
すすむ

東京カレンダーショッピング

もどる
すすむ

ロングヒット記事

もどる
すすむ
Appstore logo Googleplay logo