新婚クライシス Vol.6

新婚クライシス:ケンカの理由も忘れて機嫌をとる夫と、“夫婦の在り方”に悩む妻。男女間の思考のズレ

―大好きな吾郎くんが、私と結婚してくれたー

数々の苦難の末に、結婚願望のない男・吾郎との結婚に辿りついた英里。

結婚はゴールでないことなど、百も承知。

しかし、そんな二人を待ち受けていたのは、予想を上回る過酷な現実であった。

愛し合っていたはずの夫婦は、どのようにすれ違い、溝ができてしまったのか。

男女の価値観のズレ、見解の相違、そして、家庭外での誘惑...。

二人はとうとう “新婚クライシス”を迎え夫婦のすれ違いは深まる。そんな中、英里は赤ん坊を連れた元彼・きんちゃんに偶然再会。理想の父親像へと成長した彼の姿に、動揺を隠せなかった。


―子ども、かぁ...。

『ザ・カフェ by アマン』で咲子ときんちゃんと別れた後の、英里の足どりは重かった。

姪っ子を自分の娘のように世話をするきんちゃんの姿が、脳裏に焼きついて離れないのだ。

また咲子も、妊娠中のプレママとして赤ん坊に興味津々だった。二人が楽しそうに子育てについて語るのを見ていると、英里はどうしても胸がザワついた。

―もしも、もしも......吾郎くんじゃなくて、きんちゃんとあのまま進展してたら......。

考えてはいけない、と思いつつも、英里の妄想は止まらない。

もしもきんちゃんが夫であったら、結婚式もハネムーンも、何の懸念もなくスムーズに進んだに違いない。子どもについても、今のようにモヤモヤと一人で悩むこともなかっただろう。

ひょっとすると、咲子と同じタイミングでプレママになっていた可能性だってある。

そこまで頭に思い描いて、英里は自分の浅はかさに愕然とした。

―私って、最低...。

しかし、吾郎とは相変わらず冷戦状態が続いていて、まともな会話もしばらくしておらず、心がどんどん荒んでいた。

―こんなはずじゃ、なかったのに。

六本木一丁目のマンションの前に着くと、英里は大きく溜息をついてしまった。

最近は夫婦仲が冷え切った我が家に帰るのが、憂鬱になっている。

独りの寂しさよりも、夫婦一緒にいるのに感じる孤独の方が辛く感じるということを、英里は初めて知った。

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