LESS~プラトニックな恋人~ Vol.9

LESS:プラトニックな恋人との決別。強引な男と体を重ねるたび、塗り替えられていく心

今、東京の男女が密かに抱えている悩みがある。

恋人や夫婦間での、肉体関係の喪失だ。

この傾向は、未婚の男女においても例外ではない。

2017年冬、相思相愛だったはずの彼・健太からプロポーズされた美和子は、涙を流す。

ふたりの5年間に、何があったのか?

実は同棲1年が経つ頃から、ふたりは不完全燃焼の夜境に“プラトニックな恋人”となっていた。美和子は思いをぶつけるが、レス問題は一向に解決しない。

30歳になった美和子は、学生時代の友人に悩みを相談。御曹司・瀬尾を紹介され、彼から真剣告白された美和子は健太と別れることを決意

家を飛び出した美和子は瀬尾が用意してくれたホテルへと向かい、そのまま彼と一夜を共にするのだった。


過去との決別


「…美和子、だよね?」

出社したオフィスのエントランスで、後ろから肩を叩かれ振り返る。

「百合さん。おはようございます」

百合さんと会うのは、彼女が離婚を打ち明けてくれたあの夜以来だ。

その後どうしているか気になっていたが、彼女から放たれる空気はとてもポジティブで顔色も良かったから、私は心からホッとした。

長年レスだった夫と別れ、新たな人生を選んだ百合さん。…今の自分と、重ね合わせずにはいられない。

「美和子、髪切ったんだね。雰囲気が全然違ってたから別人かと思ったわ」

「そうなんです。なんだか急に…バッサリいきたくなって」

瀬尾さんと一夜を過ごした後、私はずっとロングだった髪をボブにした。

髪を切った。ただそれだけのことだけれど、ハサミで髪が切り落とされていく様はまるで憑き物が落ちていくようで、肩先でふわりと揺れる髪は、不思議と心まで軽くしてくれた。

「何か、あった?」

百合さんに、遠慮がちに顔を覗きこまれて口ごもる。

「何もないですよ」

私は慌てて笑顔をつくり、視線を外した。

勘の良い百合さんに、隠し事はできない。打ち明けてしまいたい気もしたが、しかしまだ人に話せる段階ではない、そう思ったのだ。

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