今、東京の男女が密かに抱えている悩みがある。
恋人や夫婦間での、肉体関係の喪失だ。
ある統計では、今や世帯年収1,000万円を超える夫婦においては、過半数以上が当てはまるという。
この傾向は、未婚の男女においても例外ではない。
−結婚するならこの人。
美和子(32歳)には、そう信じ付き合ってきた最愛の彼・健太(32歳)がいる。相思相愛、いつも仲の良いふたりは周りも羨むお似合いカップル。
しかし美和子は、誰にも言えぬ悩みを抱えていた。
待ちに待った、プロポーズ
恵比寿ガーデンプレイスにある『ガストロノミー ジョエル・ロブション』。
健太からこの店を予約したと聞かされて、私の胸は喜びと動揺で震えた。
ベタだと言われようが、私は世の大半の女性の例に漏れず夢見がちなのだ。
付き合い始めた当初、27歳だった私は、プロポーズは『ジョエル・ロブション』、エンゲージリングはティファニー・セッティグが理想だと、健太に話したことがある。それを彼は律儀に覚えていてくれたのだろう。…もう、5年も前のことなのに。
−私たちは、どこで間違ってしまったのだろう。
答えの出ぬ問いを、私はもう何度も何度も繰り返してる。
決定的な何か、があった訳ではない。知らず知らずのうちに掛け違えたボタンが、年月を経て元に戻せなくなっただけ。
だから誰も、悪くない。
「美和子、俺と…結婚してください」
憧れだった『ジョエル・ロブション』。お城さながらの空間で、健太が精一杯カッコつけて差し出したのは、私が望んだ通りのティファニー・セッティングだった。
見たことのないティファニーブルーのエンゲージボックスに歓声をあげると、これは銀座本店で今年7月に登場したばかりなんだよ、と得意げに彼は言った。
母親に褒められるのを待っているような、無邪気な瞳。健太のこういう可愛い仕草に、私は弱い。
「健太、私…」
言いかけて、言葉に詰まる。気が付いたら、私は大粒の涙を流していた。
この記事へのコメント
このままじゃ、多分駄目になる。
気になります。
家族になっちゃうと、兄妹とか親子みたいな感じで
尚且つ、生活感満載のベッドでやる気もしなくなかなる。
永遠の課題かも。