アモーレの反乱 Vol.12

アモーレの反乱:離婚を受け入れた夫が敢えて妻に教えなかった、たったひとつの真実

港区在住。遊びつくした男が、40歳で結婚を決意。

妻には、15歳年下で、世間知らずな箱入り娘を選んだ。

なにも知らない彼女を「一流の女性」に育てたい。そんな願望もあった。

誰もが羨むリッチで幸せな結婚生活を送り、夫婦関係もうまくいっていたはず…だったのに。

4年後、妻が、何の前触れもなく、離婚を切り出す。しかも、思いもよらぬ「離婚条件」を提示して。

世間を知り尽くして結婚した男と、世間を知らずに結婚してしまった女。

これは港区で実際に起こった、「立場逆転離婚」の物語。

15歳年下の妻・利奈(りな)に突然離婚を切り出された夫・昌宏(まさひろ)。2人はすぐに別居したが、夫が強引にマンションでの話し合いに持ち込む。そしてお互いの本心を知った夫婦に最終決断の時が迫る!


「私たちは、これから…このまま一緒にいて、お互いが望むような人に変われるのでしょうか?」

妻・利奈が、つぶやくように発した言葉。

それは僕が「僕が今から変われたら、僕たちはまた始められるか」と聞いたことに対する答えなのだろうか。

「それはつまり…僕は、君が望むようには変われない、って言いたいのか?」

もう遅い。私たちがやり直すことはできない。

そう言われた気がして、やるせなくなった。妻の顔を見つめていられず、視線を泳がせると、ガラスのテーブルの上に置かれた妻の手に、ギュッと力が入るのが見えた。

―指輪、どうしたんだろうな。

何もつけられていない左手の薬指。

いつもピンクページュに上品に整えられていた爪は短く切り揃えられ、ネイルは塗られていない。

ああ、そうだ、料理教室の先生だからだよな。

分かっていながら、自分の知らない変化に寂しくもなる。

黙ったままの妻が、必死に言葉を探しているのが分かる。そのための沈黙だとわかっていても、もどかしくて、辛い。もう一度同じ質問を投げかけようと思った時、妻が口を開いた。

「あなたが、というより、私が変われるのかということなんです。」

「利奈は努力して変わったじゃないか。だから僕にも…。」

―チャンスをくれないか。

そう言おうとして、言葉に詰まってしまった。自分の言葉が随分安っぽく感じる。

何をどう伝えれば、彼女に僕の本気が伝わるのだろうか。今度は僕が言葉を探す。その沈黙を破って、彼女が言った。

「でも今変った私は、あなたが望んだ私ではないでしょう?」

正直に言うと、そうだ。けれど。

「僕が望む、望まないというより、新しい君を、僕が知らなかった君を知りたいと思うよ。その気持ちに嘘は無い。」

信じてもらえなくても、何度でも言わなければならない。彼女を失いたくない。今、この瞬間本当にそう思っているのだから。

「あなたが、こんなに正直に話してくれたのは初めて、ですね。」

そう言った彼女の表情は穏やかで、僕は少しだけ、嬉しくなる。

「だから私も、正直に話そうと思う。たとえあなたを傷つけることになっても。」

彼女の語尾から、意図してなのか敬語が消えた。

「私が変わろうと決意したのは、きっと、あなたに復讐したかったから。」

―復讐したかった。

強く言い切られた言葉が、耳鳴りのように僕の頭の中で鳴り響く。そして…。

そう言い切った妻の…利奈の顔が、痛みに耐えるように歪んでいたことが、僕をますます混乱させた。

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