東京シンデレラ Vol.5

買ってきた惣菜を、トレイのまま食卓に出す品のなさ。高望みをし、甘い蜜を吸った女の誤算

私たちは、東京にいる限り夢を見ている。

貧しい少女にガラスの靴を差し出す王子様が現れたように、いつかは幸せになれると。

だが必ず、自分が何者でもないと気づかされる時が来る。

神戸から上京し、港区女子へと変貌を遂げる真理亜と、その生き様を見つめる彩乃。

彼女たちが描く理想像は、現実なのか、それとも幻なのか...

真理亜への嫉妬心から焦る彩乃。しかし遂に佐藤という彼氏を手に入れたのだが...


東京の都心で女性が一人働いて家賃を払い、ある程度の生活水準を保っていくのは大変だ。皆、どうやって暮らしているのだろうかとたまに疑問が湧く。

一生懸命働いても家賃と生活費に全て消えていく虚しさ。

その時にいつも思うことは同じだった。

「どこからか王子様が現れて、素敵なお城に住ませてくれないだろうか」と。



「彩乃、一緒に暮らさないか。」

バツイチ彼氏の佐藤にそう言われたのは、付き合い始めて半年経った頃だった。

「も、もちろん!」

藁にもすがる思いだった私の答えはYESに決まっている。

この頃、私は池尻の1Kの自宅が嫌いで仕方なかった。

狭いし、Instagramに投稿できるような素敵な部屋でもない。少しでも背景が映れば狭さがばれてしまうような、みすぼらしい部屋。

社会人になった当初は何人か友達を呼んだこともあったけれど、今となっては恥ずかしくて誰も呼べていない。

しかも佐藤が探してきた物件は、白金にあるタワーマンションの高層階。私の東京ライフの理想形のパズルを完成させる上で、大きなピースとなる。

—これでいよいよ私もそっち側に行ける。

そう思うと、足取りが軽くて仕方なかった。しかし、シンデレラは知っていたのだろうか。

誰かに与えてもらったお城で暮らしても、幸せになれない場合があるということを。

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