港区であれば東京の頂点であるという発想は、正しいようで正しくはない。
人口約25万人が生息するこの狭い街の中にも、愕然たる格差が存在する。
港区外の東京都民から見ると一見理解できない世界が、そこでは繰り広げられる。
これはそんな“港区内格差”を、凛子という32歳・港区歴10年の女性の視点から光を当て、その暗部をも浮き立たせる物語である。
「港区内格差」一挙に全話おさらい!
第1話:“港区特権階級”に属す一握りの男。そこに群がる女たちと、うごめく欲望
凛子は、雅紀と出会うまで港区の中心で10年間生きてきた。日々変わりゆく人間模様。欲望と嫉妬が渦巻き、それが街の輝きとなって、まるでブラックダイヤモンドのように眩く光る港区。
今はそのダイヤモンドの輝きは、1.5カラットの指輪となり、左手の薬指に収まっている。キラキラと太陽光に反射して光る指輪を眺めていると、美奈子からLINEが入った。
—凛子、今夜何してる?佐藤さんの誕生日会が『1967』であるの。久しぶりに行かない?
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第2話:港区内で格下とされる芝在住の女が、バーキンを持つ前にやるべきこと
華やかで高級レジデンスも多い六本木、麻布、白金エリアは港区内でも格上であるのは、疑う余地もない。
しかしそのエリアと微妙に近くて遠いのが、芝というエリアだ。その微妙な距離感こそ、芝が港区内でのランクを落としている要因かしら、と凛子は思っている。だから凛子は、綾乃の答えに一瞬戸惑ってしまった。
港区でたまに見受けられる、持ち物と住んでいる家のバランスが悪い女性。綾乃はまさに、典型的なそれだった。
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第3話:不動産屋よりヒルズの間取りに詳しい女が、ミッドタウンのホムパに潜入!
六本木の価値を上げたのは、間違いなく六本木ヒルズの功績が大きい。もはやヒルズのない六本木など考えられないほど、アイコンとして認知されている。
ヒルズのあとに完成したミッドタウンも然りだ。この2つは、六本木を象徴するビルとしてそびえたっている。佐藤はなぜ、ミッドタウンの方が今の彼自身に”合っている”というのだろうか。
六本木ヒルズと東京ミッドタウン。似ているようで似ていない2つの象徴。その違いを、凛子は佐藤に尋ねてみた。
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第4話:男の価値は、店選びで決まる。レストラン偏差値で測られる港区内ランク
「市原さんって、色々と美味しいお店を知ってそうですね。」
少し神経質な雰囲気の目をした市原が、不思議そうな顔でこちらを見つめてくる。
「全然ですよ。僕はこの界隈のお店以外、まったく詳しくないですから。基本的に、遠いお店には興味がないんです。でも、それで十分なんです。だって、この界隈は東京屈指の名店揃いですから。」
市原の考えは、港区女子に似ていた。
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第5話:一部の港区民には“遠征”レベルの芝浦アイランド。そこで開催されるママ会の実態
元々レイナは毎晩一緒に港区を徘徊していた仲であり、そんな彼女の妊婦姿を一目見たいという欲求に駆られ、渋々“行く”と返事をしてしまった自分がいた。陸の孤島へ向かうタクシーに乗っている間、何度もつぶやいた。
「やっぱり...遠いわね。」
しかし、芝浦云々よりも、港区に住むママたちが集う会に参加したことの方が、よほどの判断ミスだったことに、この時はまだ気がついていなかった。
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第6話:芸能人・著名人で溢れる港区の宴。そこにはびこる、知人自慢する男と“宴の参加費”で稼ぐ女
市原に紹介されて初めて、その場にもうひとりいることに気がつく。
少し背が低くて浅黒い肌、爽やかな笑顔ながらも、不気味なくらいに歯が真っ白に輝いている清水という男。
「凛子さん、ですね。噂は聞いておりました。確か、佐藤さんと仲が良いんですよね?あと、俳優のシュン知ってますよね?僕、友達なんですけど...」
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第7話:「過去は、消せないから」本当に豊かな人が、港区内で恋人を探さない理由
ペアリングのシャンパンを飲みながら、美奈子が前回の食事会の様子を振り返り始めた。確かに、宴の参加費で稼ぐ女性がいるなんて何ともいけすかない。
「彼女、港区データバンク上ではブラックリスト入りしてますから。」
市原がグラスのシャンパンを傾けながら、微笑んでいる。
「港区データバンク...?それって、何ですか?」
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第8話:永遠に叶わない、白金出身のお嬢様。大人になって港区に住み始めた者が抱える負い目とは
出身地を聞かれた途端に歯切れが悪くなる百合子を見て、更に彼女が抱えている負い目を覗き見た気がした。面倒な人に出会ってしまった...そう思っていた時に、横から柔らかな声が聞こえた。
「あら、凛子さんは神戸ご出身なんですか?上品で、街並みも綺麗で、とても素敵な場所ですよね。」
後ろを振り返ると、紗江がにこやかに微笑んでいた。
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第9話:かつてタワマンに住んだ港区の男たち。その反動で増える引っ越し先とは?
挙げればキリがないほど、港区には良いタワーマンションが沢山ある。
そして、それらのタワーマンションから見える景色は、言葉にできないものがある。東京タワーや他の高層マンションなど、夜になると一つ一つが優雅に輝きを放ち、眩いばかりだ。
「タワーマンションがダメと言っている訳ではないんです。ただ、一度タワーマンションに住むと、次は何故か低層マンションに住みたくなるんですよね...」
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第10話:自分を大きく見せるため、どこかに属して身を守る。男たちの港区派閥事情
男というのは何故、何歳になっても考えることが変わらないのだろうか。
どんなに年齢を重ねても考えていることは基本的に変わらず、女性にモテたい、カッコ良く見られたいという欲が湧く。そして自分達が一番だと信じている。
“彼ら”を見ていると、港区という狭い世界で必死に何かを守ろうと、縄張り争いをしているようにしか見えなかった。
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第11話:港区から離れゆく勝者たち。本当の豊かさを知った者が、港区の次に住む場所とは
「なんで、佐藤ちゃんは茅ヶ崎に引っ越したの?」
店に着いてからずっと聞きたかった質問は、乾杯が済んでからようやく聞けた。
「一言で言うと...もうお腹いっぱいになったんだ。二人とも分かるだろう?この気持ち。」
佐藤の一言に、とっさに何も返せない凛子と美奈子がいた。
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第12話:住む場所でカテゴライズされる人々。三田なのに麻布在住と言いたいCAのプライド
“住む場所は、その人のパーソナリティーを形成する”と誰かが言っていた。
職業が、何となく人を枠に押し込んでいくように、住む場所は時として人を変えていく。それは、人がその街の特徴に合わせていくのか、それとも街が人を変えるのか。どちらがすり寄っていくのかは分からない。
しかし、住所は各々の人格に影響を及ぼすことだけは間違いない。
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第13話:ハワイ大好き港区民。東京と同じ顔ぶれで遊ぶハワイに、何を求む?
「出た、ハワイ大好き港区民!」
美奈子がケラケラと笑っている。そう言う美奈子の方がはるかにハワイ好きだと思うけど、と言いたくなる気持ちをぐっとこらえる。
「何かさぁ...港区にいると、必ずいるよね。二言目には“ハワイ”って言う人。」
美奈子の発言に、思わず笑ってしまった。たしかに、そう言う人が多いからだ。
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第14話:ジム代に毎月20万!健康診断書を見せ合って競うのが、港区上層部の主流
20代前半の頃、毎晩明け方まで飲み明かし、メイクしたまま寝たことは数知れず(その度に、まるでゴビ砂漠のように乾いた肌を見て、絶望に引きこまれてきた)。
当時周りにいた男性たちも、同じように明け方まで浴びるほど酒を飲み、シメにラーメンや焼肉に行くなんて日常茶飯事のこと。
深夜2時、西麻布界隈のラーメン屋や焼肉店は入れないことが多かった。しかしここ数年で、そのような“昔ながらの港区っぽい飲み方”をする人は激減した。
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第15話:「最近の子は、食事会しない」なんて嘘。呼ばれてないだけと認めぬ、女の勘違い
「港区では、今も毎晩宴が繰り広げられ、男女の艶やかな出会いに溢れている、ということです。」
星羅が隣で大きく頷いている。
「でもそれを知らないイコール、呼ばれていないだけ。純粋に、もう世代交代なんですよ。」
『チャイナルーム』が、一瞬静まり返ったような気がした。
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