港区内格差 Vol.12

住む場所でカテゴライズされる人々。三田なのに麻布在住と言いたいCAのプライド

港区であれば東京の頂点であるという発想は、正しいようで正しくはない。

人口約25万人が生息するこの狭い街の中にも、愕然たる格差が存在する。

港区外の東京都民から見ると一見理解できない世界が、そこでは繰り広げられる。

これはそんな“港区内格差”を、凛子という32歳・港区歴10年の女性の視点から光を当て、その暗部をも浮き立たせる物語である。

白金で生まれ育ったお嬢様の格の違いを思い知り、港区タワマン・オワコン説に異論を唱えた凛子。港区で燃え尽きた佐藤の茅ヶ崎移住に複雑な思いを抱いた。


女は美女を前にすると身構える


何故か昔から、凛子はCAという職業の女性に対して甘酸っぱい憧れと、偏見を持っている。

理由は分からない。幼い頃、家族旅行で乗った飛行機で、制服を着て働く人たちが美しく、眩しく見えた憧れが今も残っているからなのか。

それとも毎晩のように食事会に顔を出し、積極的に結婚相手を探す女性を多く見過ぎたからなのか。

どちらが正しいイメージなのか、自分でも分からずにいる。

職業で人を判断してはいけないことくらい百も承知しているが、職業とは時として人を、ある種の枠にはめ込むほどの力を持っている。

だから今日も美奈子からCAの美咲を紹介された時に、何故か思わず背筋が伸び、顔の筋肉が少し固まった。

「凛子さん、本当にお綺麗ですね。」

涼しげな笑顔で賞賛の言葉を送ってくれる美咲をまじまじと見つめる。

ピンと張った肌に、CAさん特有の少し濃いめの眉とリップメイク。

彼女たちの美容情報はどんな雑誌よりも役に立つと聞いたことがあるが、確かに機内の乾燥地獄を生き抜いているとは思えないような、眩いほど綺麗な肌をしていた。

「そんなことないですよ。美咲さんの方こそ、本当にお綺麗で。」

女性は、綺麗な女性が目の前に座ると何故か緊張する。自分の肌にアラはないか、今日の洋服は大丈夫か...。

同性にしか分からない無言の緊張感を感じながら、美奈子主催のランチ会は粛々と進んだ。

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