運命なんて、今さら Vol.15

いつのまにか傷つくのが怖くなり、「無難」で「賢い」選択をするようになった。「運命なんて、今さら」全話総集編

気づけば32歳。

仕事もそれなりに順調で、周りから見れば「いい年頃」の大人。

でも、その「順調」の裏にある虚しさがある。

かつての自分は、もっとまっすぐだった。好きな人には全力で向き合い、泣いたり笑ったりするのが当たり前だった。

けれど、いつのまにか傷つくのが怖くなり、「無難」で「賢い」選択をするようになった。

「恋愛なんて、もういいよ。どうせうまくいかないし、面倒だし」

そう心の中で繰り返しながら、恋人いない歴は7年に伸びた。

ただ、そんなある日、彼女と出会った。

「運命なんて、今さら」一挙に全話おさらい!

第1話:「自然に会話が弾むのがいい」冬のキャンプ場で意外な出会いが…

赤ワインを手元のカップに注いだ寿人は、キャンプチェアに腰を沈めた。少しずつ味わいながら、目を閉じてひとりほほえむ。

恍惚。この言葉は、こんな時間のためにあるのだと思いながら――。

「…あの」
「…………」
「あの、すみません。…突然、すみませんっ」
「……ふぇ?」

驚いて目を開けると、寿人の目に、女性の姿がうつった。

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第2話:28歳女性と初デート。待ち合わせ場所に現れた女の服装をみて、男が息をのんだワケ

テントのジッパーを上にあげると、汚れのない透明な冷気が体を包んだ。

― 結海さん、いるかな。

乱れた髪を手で整えながら、結海がテントを張っていた方を見やる。しかし、彼女のいたサイトにはもう、何も残されていない。

「もう出たのか…。随分早いんだな」

うつむいた寿人は、テントの脇に見慣れない赤いビニール袋が置いてあることに気づいた。

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第3話:1ヶ月前に別れた元カレにありえない「お願いごと」をされ…。28歳女が困惑した理由

「結海〜。聞いてる〜?」

木曜の仕事終わり。結海は、用賀駅のホームを歩きながら電話をしている。

耳に響くのは、元カレ・研哉の声だ。

「今週どっかで、夜時間作れない?お願い。いいよな?」

― ああ、もう…。別れているのに。

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第4話:「これって脈なし?」初デートの後、彼女から1週間連絡がない。いい雰囲気だったのにナゼ…

薄汚れていた白い外壁を赤いタイルで飾り、がたついたスライドドアをガラス製の引き戸に変更した。

それから、北欧から取り寄せた木製の大きなテーブルに商品を並べて売りはじめた結果、SNSで話題のお店に。若い世代の来客数が一気に増加し、営業利益は今も、過去最高を更新し続けている。

― …全部、研哉のおかげ。

この「イメチェン」の立役者は、広告代理店を経営している元カレ・研哉だ。結海は、彼に心から感謝をしている。

ただ、この一件を境に、二人の関係は大きく変わってしまった。

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第5話:11歳年下の女子大生に恋愛相談してたら、意外な展開に。恋愛に奥手な32歳男は…

寿人は今日、華の誕生日祝いに、四谷の鮨店に来ている。来週21歳を迎える大学3年生の華は、カウンター鮨に来るのは生まれて初めてだとはしゃぎ気味だ。

「…んで、話の続きは?結海さんって人と、先週渋谷でお茶して…それきりってこと?」
「…そ。今のところ、それきり」

寿人は今日、華に片思いの話をするつもりなどなかった。

しかし「お兄ちゃん、相変わらず何もないの?」とやや挑発的に聞かれたので、つい結海のことを語り出してしまったのだ。

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第6話:気になる女性との通話中に聞こえた“あの音”。32歳男はガッカリしてしまい…

「待ってよ、結海さんにかけてるの?返して!」

サブちゃんの握力はとんでもなく強く、寿人は、スマホを奪い返せない。

「やめてって。高校生みたいなノリ」
「お、出たよ」
「え?」

サブちゃんはにやりとして言い、寿人にスマホを押し付けた。寿人は、スマホをあわてて耳に当てる。

電話の向こうで結海は、おどろいた様子で「ご無沙汰しています」と言った。寿人は、バーの外に出ることにした。

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第7話:「元カレと縁を切れない…」家を訪ねてくる彼を拒否できない28歳女は、ついに…

「…なんかお前、変わったよ。いつもニコニコして、なんでもしてくれて…あんなに俺に従順だったはずなのに。新しい男ができて、俺を捨てるんだろ?ふざけんなって」

結海は、表情のない目で研哉を見つめ返した。ここで否定をしたり、悔しさや怒りをぶつけるよりも、早く研哉のいない人生へと駒を進めたいと思ったのだ。

「…研哉が今言ったこと、私にとっては、ぜんぶ逆なの」
「なにが?」
「私は、研哉の前だと、肩に力が入ってしまって、息が苦しい。研哉の前だと、自分らしくいられない」

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第8話:「彼女の通話履歴を見て…」28歳男のヤバい行動。爽やかエリート社長の裏の顔とは

「上条さん、ありがとうございました」

廣崎研哉は深々と頭を下げ、ツイードのコートと黒革のバッグを手に持つ。寿人は先回りして、会議室のドアを開けた。しかしその瞬間、廣崎研哉は立ち止まった。

「廣崎さん…どうかされましたか?」

見上げると、その顔からすーっと笑顔が消える。先ほどまでの快活な声色が嘘であるかのように、彼は冷たい声をひねり出した。

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第9話:彼と初めての夜デート。22時半、「まだ帰りたくない」と思った28歳女は…

大学で出会った研哉が、社長になって変わったこと。実家のパン屋のサポートを頼んだら、見下してくるようになったこと。別れ話をした12月以来、祖母と仲が良いことを持ち出して脅してきたり、きつい言葉をぶつけてきたりなど、圧力をかけてきたこと。

そのあんまりなふるまいを聞いて、寿人は、自分の中にめずらしく荒い感情が巻き起こっているのを感じた。

― 最低なやつだ。

やっぱり、怖い思いをしていたのか。結海さんは、そんなやつとは、縁を切ったらいい。

「で、縁を切りました。やっと」
「え?」

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第10話:「今夜は帰りたくない」と2回目のデートの帰り、28歳女に言われた男。どう対応するのが正解?

「あ、あの。私」
「私は、寿人さんのこと、本気です」

結海の声が、少し震えている。

「今日…帰りたくないくらいです。できたら、ずっと一緒にいたい。寿人さんと」

寿人は、コーヒーを持とうとしていた手を止める。

「え…」
「…ダメ、ですか?」

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第11話:初めて彼のマンションを訪れた28歳女。しかし、滞在10分で、突然「帰りたい」と思った理由

寿人の愛しい表情は、目の前にある使い込まれた女性用化粧品に阻まれ、霞んで消えた。

― 寿人さんには、特定の彼女がいて私は遊ばれているのかな。本当はどんな人なんだろう…。

ほんの少し抱いた疑いが、結海の心を大きく揺さぶる。

元カレ・研哉に心を壊されかけていたとき、寿人のことを何度も恋しく思った。

最初に会ったときから素で笑えて、声を聞くたびに心がほぐれて。寿人とは「運命」で出会えたような気がしたことさえあった。

なのに、こんなことで、簡単に疑ってしまいたくなるなんて。

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第12話:「友達以上、恋人未満の関係に終止符を打ちたい」32歳奥手男子が提案した渾身のデートプランとは

寿人は、自分の学生時代を回想する。勉強と塾講師のアルバイトに夢中で、あとは日々を漫然と過ごしていたあの頃。

4年生の秋に初めて女性と交際したものの、社会人になって関係が曖昧になり、半年ほどで振られた。

― もっと、しっかり恋愛しとけばよかった。そしたら今頃、結海さんに気持ちを言えてたかな。

冷蔵庫からアイスコーヒーを取り出し、グラスに注いで一気に飲み干す。

でも、もう大丈夫。結海に対する“大きなアクション”を決めたのだから。曖昧な状態に、区切りをつけるために。

第12話の続きはこちら

第13話:出会って4ヶ月、お泊りしたいけど日帰りで遠出に誘う彼。32歳奥手男子の本音とは

しばらく走ると、談合坂サービスエリアが見えてくる。富士山近くのキャンプ場にも、あっという間に着くだろう。

― さあ、今夜だ。

寿人はハンドルを握り直し、家で何度もシミュレーションしてきた「告白」について考えた。

今日こそ結海に伝えるのだ。本当に本当に、大切に思っているということを。

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第14話:34歳で彼女と初めての海外旅行。男が旅行中ずっとソワソワしていたワケ

結海がつい微笑んだのは、彼の手が小刻みに震えていたからだ。彼の愛しい手の甲を指先でトントンとさすりながら、結海は「大丈夫よ」と優しくつぶやいた。

― こんな日がくるなんて。

寿人に出会うまで、こんな幸せが待っているとは思っていなかった。数年前に想像していた未来とはだいぶ違ったところに、今たどり着いた。

幸せで、満たされている日々。現在30歳。今、人生が一番明るい。

第14話の続きはこちら

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