運命なんて、今さら Vol.12

「友達以上、恋人未満の関係に終止符を打ちたい」32歳奥手男子が提案した渾身のデートプランとは

◆これまでのあらすじ

恋人いない歴7年。恋愛をあきらめて生きてきた税理士・寿人(32)は、趣味のソロキャンプ中に結海(28)と出会う。デート後に家まで来てくれた結海は、ひょんな勘違いで、早々に帰ってしまった。寿人はあるアクションを決める。

▶前回:初めて彼のマンションを訪れた28歳女。しかし、滞在10分で、突然「帰りたい」と思った理由


春らしい、穏やかな日曜だ。

目を覚ましたばかりの寿人は、寝室の窓を開け、心地いい風に目を細める。

「んーー」

伸びをしたそのとき。キッチンのほうから「チン」と、電子レンジの音が聞こえた。

「ん?」

一瞬、昨日までここにいた結海が、まだ部屋にいるのかと錯覚する。

― いやいや。華か。

見に行くと、やはり妹の華がキッチンを使っていた。

「うっわ、お兄ちゃん髪ボサボサ。起きるのおそ。もう12時半だよ」

「お…そんな時間?」

「朝まで結海さんと一緒だったのね」

華が、訳知り顔で言う。

「違うって、夜ふかししてただけ。華はいつ帰ってきたの?」

「今。オールしてたからお腹すいちゃって」

キッチンの上に、コンビニのカルボナーラが置かれている。

「これ食べたら帰る。給湯器の修理、今日来てくれることになったの」

華は、キッチンカウンターに置かれていた小さなバッグから、臨時で貸してあった合鍵を取り出した。

「はい、返すわ。…これ結海さんに渡したら?」

― おせっかいなところ、母さんにそっくりだな。

華は、パスタを宝物のように抱えて、寿人の前を横切る。途中、結海からもらったパンが入った赤い袋が、テーブルに置かれたままになっているのに気づいたようだ。

「あ、これ結海さんのパン屋さんの?」

華はにやりと笑って、ベランダに続く大きな窓を開けた。

― …華の化粧品のせいで、大変な思いしたんだからな。

何も知らない華はベランダに出て、ハンモックチェアの上でパスタを頬張りはじめる。

― にしてもオール明けでカルボナーラか。若いよなあ。

寿人は、自分の学生時代を回想する。勉強と塾講師のアルバイトに夢中で、あとは日々を漫然と過ごしていたあの頃。

4年生の秋に初めて女性と交際したものの、社会人になって関係が曖昧になり、半年ほどで振られた。

― もっと、しっかり恋愛しとけばよかった。そしたら今頃、結海さんに気持ちを言えてたかな。

冷蔵庫からアイスコーヒーを取り出し、グラスに注いで一気に飲み干す。

でも、もう大丈夫。結海に対する“大きなアクション”を決めたのだから。

曖昧な状態に、区切りをつけるために。

この記事へのコメント

Pencilコメントする
No Name
週末入れるバイトも探さずずっと娘に頼ってた親もどうなんだと思ってたけれど、母親の話を聞くと結海が「パン屋の仕事は息抜きになるからやりたい」と願い出てたからやらせてただだったんだ。結局一番悪いのは結海だった!!?
2025/03/26 05:1817
No Name
結海の成長日記 みたいになってきた🤦🏼‍♀️
2025/03/26 05:2315
No Name
あまりにも普通な展開で面白くない。キャンプに行って告白して付き合う事になり終了〜でいいと思うけど来週まだ最終話じゃないなんて、残念過ぎ。
2025/03/26 05:2214返信1件
もっと見る ( 24 件 )

【運命なんて、今さら】の記事一覧

もどる
すすむ

おすすめ記事

もどる
すすむ

東京カレンダーショッピング

もどる
すすむ

ロングヒット記事

もどる
すすむ
Appstore logo Googleplay logo