1ヶ月前に別れた元カレにありえない「お願いごと」をされ…。28歳女が困惑した理由(1/3)[東京カレンダー

◆これまでのあらすじ

恋人いない歴７年。恋愛をあきらめて生きてきた税理士・寿人（32）は、趣味のソロキャンプ中に結海（28）と出会う。渋谷で会う約束を取り付けた寿人だが、仕事帰りの彼女の思わぬ華やかさに、緊張してしまい…。

▶前回：28歳女性と初デート。待ち合わせ場所に現れた女の服装をみて、男が息をのんだワケ

― …落ち着け、自分。

寿人は、キャンプで出会った結海と渋谷のカフェにいる。

サーブされたアールグレイティーをカップに注ぎながら、なんとか動揺を鎮める。

「えっと…結海さん」

「はい」

「あの、キャンプの朝にいただいたご実家のパン、とてもおいしかったです」

「よかったです。うちの自慢商品なんです。お店は神楽坂にあるので、ぜひ来てください」

「も、もちろんです」

結海は寿人の緊張を察してくれたのか、笑顔で話し始める。

「あのキャンプの日は、早朝から15時の閉店まで、お店を手伝ってたんです。で、そのままキャンプに出かけて…。寝不足のせいで、ご迷惑をおかけしました」

「いえいえ、寝落ちして当然です。平日も土日も仕事なんて…すごいです」

「最初は息抜きのつもりで、土日だけ手伝うよって言ってたはずなんですけどね」

一人娘だから両親に色々頼られてしまうのだと、結海はゆったりとした口調で苦笑いした。

実家のパン屋には、アルバイトもいるという。しかし土日のシフトがなかなか埋まらず、結海が頻繁に駆り出されているらしい。

「今は、お金まわりの責任ある仕事まで、任されるようになって」

困り顔で話したあと、結海は小さく「はっ」と言った。

「こんなどうでもいいことばっかり。私、今日は寿人さんの話を聞こうと思ったんです」