SPECIAL TALK Vol.115

~この楽器だからこそできる表現を。歴史ある箏を武器に世界を目指す~


藝大の厳しい環境で学び直す機会と出会いを得る


金丸:大学の話が出ましたが、どちらに進学されたんですか?

LEO:東京藝術大学です。

金丸:唯一の国立の芸術大学ですね。

LEO:他の音大でも箏を学べますが、専門的な学校としてはおそらくトップクラスで、1番人気ですね。藝大の音楽学部邦楽科で箏を選択した同期は、私を含めて5人でした。

金丸:となると、倍率もなかなかのものだったのでは?

LEO:それが、最近は倍率が2倍を割ることもあるんです。40〜50年前だと、10倍ぐらいの時期もあったようですが。

金丸:それだけ受験する人が減ってしまったんですね。少子化もあると思いますが、やっぱり箏を習う人が減ったり、プロとしてやっていくのが難しかったりということが影響しているのかもしれません。

LEO:たしかに学校の箏曲部の数は増えているけど、プロを目指す人は年々減少していますね。

金丸:大学生活はどうでしたか?それまでと比べてレベルの高い人がそろっているだろうし、いろいろな出会いもあると思いますが。

LEO:環境がガラッと変わりましたね。高校までインターナショナルスクールに通っていたこともあって、年齢に関係なくフランクな人間関係が、僕にとっては基本でした。でも大学では先輩・後輩の関係もあるし、先生と生徒は師匠と弟子という感じで。

金丸:窮屈そうですね。私だったら耐えられないかも。

LEO:私が所属している沢井流は、先生たちが作曲された新しい楽曲を演奏する機会が多いのが特徴なんですが、大学では入学してしばらくは、徹底的に古典を学ぶ期間があって。邦楽の基礎から礼儀作法に至るまで、イチから学び直しました。

金丸:それもあって落ち込んだのでしょうか?(笑)

LEO:手探りのことばかりで、打ちのめされました(笑)。でも、そこできちんと学べたことは良かったし、出会いもたくさんありました。藝大だからこそ、別の科の人たちと密な関係を築けたのも良かったですね。

金丸:それがクラシック畑の人たちとの共演につながるわけですね。

LEO:そうです。そうこうするうちに、テレビ番組にも出演させてもらうようになり、ようやくクラシック奏者と同じくらいに公演の機会を得るように。

金丸:ところで、いまさらですが、箏は「こと」と読みますよね。箏と琴(こと)は違う楽器なんでしょうか?

LEO:読み方は同じですが、別の楽器です。どちらも木に弦を張った楽器ですが、駒を立ててチューニングするのが箏、ギターのように指で押さえて音程を取るのが琴です。

金丸:どちらも和楽器で、読みも同じだと、ちょっと混乱しちゃいますね。

LEO:もともと「こと」というのは弦楽器の総称で、箏は「そうのこと」、琴は「きんのこと」と呼ばれていたそうです。まったく別物なんですが、常用漢字を制定した時に「琴」が残って、「箏」が外されたことで、ますます混乱したとか。

金丸:ええっ!?いまからでも常用漢字に戻せばいいのに。どうしてそんな文化をないがしろにするようなことをしちゃったんでしょうね。

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