SPECIAL TALK Vol.108

~ピアノや音楽をもっと自由に、多くの人が慣習にとらわれず楽しんでほしい~


音大で挫折を味わい、一般企業に就職


金丸:音楽の道を進むことに対して、ご両親は応援してくれたんですか?

ハラミちゃん:それが、両親はとにかく安定した仕事に就いてほしいというタイプで。

金丸:ありがちですね。「食えないかもしれないじゃないか」と。

ハラミちゃん:その心配ももっともなんですけど。実際、ピアノだけで食べているピアニストが、日本でいったいどのくらいいるか。作曲はまた別ですが、演奏家なんて本当に狭き門なんです。

金丸:でも、音大に進学はさせてくれたんですよね。

ハラミちゃん:進学した時も悩んではいたんですよ。両親からは「将来のことを一度ちゃんと考えて」と言われていたし、自分も「どうしようかな」と思っていて。しかも入学して少したった頃、周りのあまりのレベルの高さに、ぽきっと挫折しまして。

金丸:あれ!?

ハラミちゃん:音大の生活はレッスンや練習ですごく忙しくて、唯一の休み時間は45分のお昼休憩だけ。でも、その時間もみんな練習室にこもって、ごはんを食べながら練習しているんです。

金丸:私の大学時代を思い返すと、ちょっと恥ずかしくなります(笑)。

ハラミちゃん:1年365日のうち、遊ぶのは1日だけ、みたいなのが当たり前の世界でした。

金丸:1日だけというのは、お正月ですか?

ハラミちゃん:いえ、ピアノの先生と動物園に行く日、みたいな(笑)。

金丸:そうなんだ(笑)。

ハラミちゃん:周りはそういう学生ばかりで。「このままピアノの世界ではやっていけない」と不安になって。それで卒業後は、普通の企業に就職したんです。

金丸:そうだったんですね。音楽と関係ない企業ですか?

ハラミちゃん:まったく関係ないIT企業です。私自身、それまでパソコンに触ったこともなくて。

金丸:ITですか!?それはまたどうして?

ハラミちゃん:それまでずっとピアノばかりやってきて、他のことが全然わからない。クラシックは本当にニッチな世界なので、「せっかく別の道に行くなら、全然違う世界に行こう。めちゃくちゃ大海に飛び込んでみよう」と思いました。IT企業なら世界中に発信できるはず、というのもありましたね。

金丸:挑戦しようとするのがすごいですね。音大卒でIT企業を選ぶ人は相当少なそうですが。

ハラミちゃん:全然いませんでした。

金丸:やっぱり(笑)。会社では音楽関係のことを?

ハラミちゃん:いや、まったく関係ないです。

金丸:じゃあ、プログラムを書いていた?

ハラミちゃん:企画職としてプロデューサーをやっていました。

金丸:ええっ?どうしていきなりプロデューサーに!?

ハラミちゃん:それが不思議なんですよ(笑)。ITスキルがまったくないので、完全なるポテンシャル採用だったんですが、なぜそこまでポテンシャルに賭けてもらえたのか。

金丸:音大出身者が全然いないから、逆に面白かったのかもしれません。

ハラミちゃん:実際分からないことだらけでしたが、先輩たちに助けられて。エンジニアさんやデザイナーさんたちと一緒にものづくりをするのは、すごく楽しかったです。

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