SPECIAL TALK Vol.108

~ピアノや音楽をもっと自由に、多くの人が慣習にとらわれず楽しんでほしい~


笑った回数が1回でも多い人が勝ち


金丸:でもそこからまた音楽の世界に戻るわけですよね。いったい何があったんですか?

ハラミちゃん:仕事をし過ぎちゃったんです。自分の限界値も分からないままオーバーワーク気味になって、体調を崩してしまい、半年ほど休職することになりました。

金丸:異分野からの挑戦だし、ずっと走り続けていたら息切れもしますよ。

ハラミちゃん:それで家にこもっていたら、会社の先輩が「たまには気分転換に外に出てみたら」と連れ出してくれて。その時に連れていってもらったのが、東京都庁のストリートピアノでした。

金丸:それって、YouTubeにあがっている動画の?

ハラミちゃん:そうです。半年ぶりに家を出て弾いた1曲目が、280万回再生された『前前前世』なんです。先輩がiPhoneで撮影したものを、ノリと勢いでアップしたらバズってしまって。

金丸:すごいですね。休職中に出かけた先でピアノを弾いて280万回再生。そんなことってありますか(笑)。

ハラミちゃん:休職中に遊んでいると思われても嫌なので、「アップするのはやめて」とお願いしたんですけど、「誰も見ないよ」って(笑)。

金丸:誰も見ないどころか、人生を変えてしまったじゃないですか。その先輩には頭が上がりませんね。

ハラミちゃん:実は一緒に脱サラして、今、マネージャーをやってもらっています。

金丸:そうなんですか!?いい話ですね。

ハラミちゃん:YouTubeに動画をアップロードする時にチャンネル名が必要になったんです。その時にふと思い浮かんだのが、ハラミなんです。

金丸:それがきっかけでハラミちゃんに(笑)。まったく予期せぬきっかけで、音楽の世界に戻ったんですね。でも、YouTubeで注目されたとはいえ、会社を辞める時は迷いませんでしたか?

ハラミちゃん:まずシンプルに会社を辞めるか、辞めないかの2択がありますよね。それに会社勤めを続けるにしても、復職するか転職か、あるいはニートになるか婚活するか。

金丸:いろいろと道があるなかで、ハラミちゃんになることを選んだ。

ハラミちゃん:「人生、笑った回数が1回でも多い人が勝ちだと思う」って言われたんです。先輩というか、現マネージャーに。

金丸:先輩は辞めさせる気、満々じゃないですか(笑)。

ハラミちゃん:でも「確かにそうだな」って思いました。自分が笑顔になれそうな選択を、20代のうちに一度やってみようって。だから他のカードを捨てて、ハラミちゃんというカードを切りました。

金丸:その後、広瀬香美さんとのコラボも話題になりましたね。駅のストリートピアノをハラミちゃんが弾いて、広瀬香美さんが歌って。あのゲリラライブにたまたま居合わせた人は幸運ですよ。

ハラミちゃん:活動を始めて半年たたないときに、広瀬香美さんメドレーの動画を見た広瀬さんから声をかけていただきました。本当にいきなりだったので、もうびっくりして。

金丸:広瀬さんが超ノリノリでしたね。あんなに面白い人なんだと、あの動画で初めて知りました。

ハラミちゃん:その後も何度もコラボさせていただいています。周りの人に助けてもらってばかりで、私は本当に恵まれているなと思います。単純に運がいいんですよ。

金丸:そうおっしゃいますが、最後に運をつかむかどうかは本人次第だと思います。「運がない」と言う人はたくさんいるけど、誰にでも「運が近くに来ているタイミング」はあるんです。ただ、それに気づかないか、あるいは気がついていてもつかもうとしない。それだと運を味方にできません。

ハラミちゃん:面白い考えですね。

金丸:しかも、安全なところにいながら運もつかもうなんて無理です。ハラミちゃんの場合も、ハラミちゃん1本に絞るより、会社員を続けながらやるほうがリスクは低い。だけど、会社を辞めてピアノに集中するというリスクテイクをされました。だからこそ、運をつかめたんじゃないでしょうか。

ハラミちゃん:金丸さんにそうおっしゃっていただいて、なんだかとてもすっきりしました。ありがとうございます。

高齢化する日本だから、世界的課題を解決できる


金丸:音楽に限らず、ビジネスも人生も人が選ばない道を進むほうがチャンスが広がると思いませんか?

ハラミちゃん:はい(笑)。

金丸:たとえば登山だって、スタンダードのルートがあれば、より困難なルートもあるし、誰も登ったことのないルートだってある。スタンダードのルートは危険もないけど、安全な道なりの報酬しか得られません。

ハラミちゃん:私なんてグライダーで登ってしまった感覚です。

金丸:普通の人はグライダーで頂上を目指そうとは思わない。だからこそ価値があります。

ハラミちゃん:音大からIT企業に就職するのは、超少数派の選択でした。その後のYouTuberになるという選択も少数派です。振り返ってみると、広い門と狭い門の選択がある時に、私はいつも狭い門を選び続けてきました。すると、どこかの時点で「そこにいるのはひとりだけ」という状態になれるのでは、と感じます。

金丸:それが付加価値ですよ。ハラミちゃんと同じように、ピアノという武器を持っている人はたくさんいる。行列ができているところに並んだって、いつ出番が来るのか分からないじゃないですか。

ハラミちゃん:クラシックの世界はまさにそういう部分がありますね。

金丸:「これまで誰も解決できなかった課題を解く」とか「これまでになかった体験を提供する」というような、新しい何かを世の中は求めています。過去問ばかり解いて解き方を覚えても、新しい問題に対処できるとは限らないように、優等生的に人に言われたことをきっちりやるだけでは、自分で未来は切り開くことはできません。

ハラミちゃん:会社を辞めて1ヶ月くらいたった時に、仲の良かった友達にちょっとバカにされたんです。「え、会社を辞めてYouTuber!?」みたいな。ショックでした。

金丸:そんなの気にすることありません。

ハラミちゃん:ですよね。それがあったから「心から応援してくれる人たちだけと付き合おう」と開き直ることができました。それまでやっていたSNSも全部やめたので、私にとっては2回目の人生が始まったような感覚でしたね。

金丸:それができる人は、壁にぶつかったとしてもきっと新しい道を見つけられます。

ハラミちゃん:こういう仕事ですから安定はないと思っています。ひょっとすると、ハラミちゃんをリセットする時が来るかもしれない。でも「それならそれでいいや」という気分です。

金丸:その境地に至った人は強いですよ。どれだけ安定している企業でも65歳で定年を迎えます。人生100年時代だと、残り35年もある。でも「安定しているから」という理由で会社を選んだ人は、たいていが働いている間に残りの35年を生きる方法を学ぼうとしない。だからみんな定年になって慌てふためくんです。ご家族は安定した仕事に就いてほしがっていたでしょう?

ハラミちゃん:祖母も堅い人で、私の選択に渋い顔をしていたのですが、八代亜紀さんと共演した途端に認めてくれましたね(笑)。

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