2023.09.21
SPECIAL TALK Vol.108
音楽大学進学を6歳から目指し続けた
金丸:早速ですが、ピアノを始めたのはいつですか?
ハラミちゃん:兄が習っていたのがきっかけで、3歳の時に。実は私、勉強は小学校1年生で挫折して。
金丸:早過ぎませんか(笑)。
ハラミちゃん:でもピアノは、同じ小1の時に音楽大学を目指しました。先生から受験のテキストを渡されたんです。
金丸:ピアノの先生から?
ハラミちゃん:そうです。それで「あ、自分は音大に行くんだ」と刷り込まれたというか。
金丸:じゃあ、学校の勉強は挫折したけど、音大に行くための受験勉強をずっとしていたんですね。その先生はどのようなキャリアの人なんですか?
ハラミちゃん:音大を出て、そのままピアノの先生になられた方です。
金丸:では、「自分と同じようになってほしい」と思わせる何かが、ハラミちゃんにあったんでしょうね。
ハラミちゃん:ピアノの先生というより、「あなたは演奏家になってね」という感じでした。なんせ6歳で何も考えていなかったので、先生に「音大に行くんだよ」と言われたら「分かった!」となっちゃって。
金丸:勉強は苦手ということですが、スポーツはどうでしたか?
ハラミちゃん:そっちもまったく(笑)。運動の成績も学年で下から2番目くらい。50メートル走は12秒台ととにかく遅くて。
金丸:ピアノの才能があって良かったですね(笑)。ハラミちゃん 本当に(笑)。
金丸:でも、小学校の時って「将来はサッカー選手になる」みたいな子どもはたくさんいるじゃないですか。その中で本当に夢を叶えるのはほんのひと握りだけど、ハラミちゃんは実現させました。
ハラミちゃん:確かにそうですね。
金丸:ピアノの練習はどのくらいやっていたんですか?
ハラミちゃん:最初の頃は、レッスンが週に1回。土曜の昼2時から夜10時までやっていました。
金丸:えっ。小学生で8時間も!?
ハラミちゃん:音大の試験は普通に弾くだけじゃなくて、楽譜を1回見て一発で弾けるかというテストや、演奏を聴いてすぐ楽譜に起こすテストもあるし、音楽で使用されるさまざまな記号やイタリア語の勉強もしなくてはいけません。
金丸:全部やろうと思えば、当然時間もかかる。
ハラミちゃん:だからそのぶんレッスンも長めで。
金丸:アスリートの英才教育みたいですね。ずっとその先生に習っていたんですか?
ハラミちゃん:いえ。「ピアノあるある」だと思いますけど、「あなたはもっとうまい先生に習ったほうがいい」と、別の先生に託されて。
金丸:自分のところに囲い込もうとしないのはいい文化ですね。
ハラミちゃん:何人かの先生に教えてもらって、最後に行きついたのがすごく厳しい方で。眉間に深いシワが刻印されていて、笑顔でも怖く見えるような厳格な方でした。
金丸:私だったら絶対に逃げ出しています。
ハラミちゃん:私も逃げ出しそうな自分を必死に抑えながら行ってました(笑)。でもおかげさまで、音大に進学できました。
金丸:ところで、お兄さんもピアノは続けたんですか?
ハラミちゃん:小学校の頃にはやめてましたね。
現代音楽を切り開いたドビュッシーに魅せられる
金丸:習い事のピアノって、カリキュラムがきちっと決まっていますよね。「バイエル」に始まり、次はこれ、それが終わったらこれ、というように。私はその時点で息苦しく感じてしまいそうです。
ハラミちゃん:私はほとんどそのとおりに進みました。学校の歴史の授業が縄文時代から始まるのと一緒で、バッハから始まり歴史順に習っていくんです。
金丸:ハラミちゃんの好きな作曲家は誰ですか?
ハラミちゃん:ドビュッシーですね。フランスの音楽家で、現代音楽を切り開いた人です。
金丸:ということは、割と最近の人だから習うのは最後のほう?
ハラミちゃん:はい、本格的に習ったのは高校時代でした。
金丸:ドビュッシーのどんなところがお好きなんですか?
ハラミちゃん:それまでの古典的なものをぶっ壊したところです。東洋の音楽技法を取り入れたり、インドネシアの独特の音階で作曲したり。
金丸:なんとなく、クラシックの世界は出るくいが打たれそうなイメージがありますが。
ハラミちゃん:おっしゃるように、当時は批判の声もあったみたいですが、それでもちゅうちょせず自分の音楽を極めたんです。「ドビュッシーのような人がひとりいるだけで、音楽の世界にこんな変化が起きるんだ」と衝撃を受けました。
金丸:絶対音感はお持ちですか?
ハラミちゃん:ありますね。
金丸:絶対音感があると、1度聴いた曲がすぐに弾けたりするのでしょうか?
ハラミちゃん:それはイコールではないですね。絶対音感を持っていて、かつ記憶力があって、さらにアレンジができると、1回聴いただけで弾けます。
金丸:ハラミちゃんはそれができるということ?
ハラミちゃん:はい、できます。
金丸:すごい!それって、聴いた曲が頭の中で楽譜になるということですか?
ハラミちゃん:いえ、譜面にはなっていません。たとえば「『上を向いて歩こう』を歌ってください」と言われたら、楽譜がなくてもなんとなく歌えるじゃないですか。
金丸:確かに、特別に何か意識しなくても歌えますね。
ハラミちゃん:それは記憶のなかの曲を、口や声帯で再現しているわけですが、私の場合は口の代わりに指が勝手に動くような感覚です。
金丸:歌も得意なんですか?
ハラミちゃん:それが実は……音痴なんです。
金丸:うそでしょう!?
ハラミ:いや、本当に(笑)。
金丸:そんなことってありえるんですか?
ハラミちゃん:頭で音が分かっていても、喉を操るのが下手なんです。「ド」の音を出そうと思って、「ドー」と発声してもピッチがずれているのが分かってしまう。分かるのがまたつらくて。
金丸:自分が音痴だと思い知らされる(笑)。
ハラミちゃん:自分の声がどの高さまで出るかも分かるから、聴いただけで「あ、この曲は無理。歌えない」って一瞬で判断できてしまう。絶対音感があるとそういったデメリットもありますね(笑)。
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